ビジネスマンの日常業務は「情報」の処理です。情報をどのように整理するかに明け暮れているといっても過言ではありません。情報を整理できなければ、情報の波に翻弄されてしまうだけです。では、ビジネスマンを翻弄する情報とは何でしょう。
インターネット上で行き交う電子化されたものや過去のデータを焼きつけた記憶メディアなどが思い浮かぶのではないでしょうか。もちろん目に見えない世界の情報は膨大です。しかし、会社で働く人にとって、もっとも多い情報は紙に印刷された「文書」です。
机の上に積み重なって、どこに必要な文書があるのかわからずに困った経験は誰にでもあることでしょう。こうした文書を整理するには、ファイリングが最適です。
ファイリングとは、文書整理の手法のことです。どんな現場にも「ファイリングこそ不可欠」—これは長年ファイリング・コンサルタントとして多くの企業で社内環境の整備に携わってきた私の結論です。
21世紀に入り、グローバルなネットワーク型社会といわれる時代になって、ファイリングなんてアナログな手法が通用するのか? そんな疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
しかし、どんなに最先端の技術が導入されても、オフィスの生産性を上げていく最初のステップは変わりません。身のまわりの情報やモノをスッキリと整理し、全体がよく見通せる状態にすることです。
およそ60年ほど前にアメリカからファイリングが日本に持ち込まれたときに提唱された「3つの柱」—これについては2章-1でもふれますが、
①不要文書の廃棄 ②文書の共有化 ③文書に流れをもたせる
これらの3ヶ所の「文書」という言葉を「情報」と置き換えた場合、この3つのキーワードは陳腐化するどころか、現代のビジネス現場で求められるものだと思いませんか。
情報を扱う環境が複雑化していく時代だからこそ、あらゆることに応用が効く考え方や原理原則、普遍性が必要とされ、それらをシンプルに実行する手法が求められるのです。
「できない、やらない」口実を探すより、まずは身近なところから実践してみることが大切です。本書がそのお役に立てれば幸いです。
小野裕子