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「逃げ恥」にみる結婚の経済学(毎日新聞出版)
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第1章 「逃げ恥」が明らかにした家事労働の経済価値 >>> 是枝俊悟

『「逃げ恥」にみる結婚の経済学(毎日新聞出版)』
[著者]白河桃子 [著者] 是枝俊悟 [発行]PHP研究所


読了目安時間:33分
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ドラマ「逃げ恥」で契約結婚はこう始まった!



 まずは簡単に、ドラマ「逃げ恥」でどうやって契約結婚が成立したのかを振り返ってみましょう。

「逃げ恥」の物語は、派遣切りに遭って求職中だったみくりが家事代行スタッフとして週1回の契約で(ひら)(まさ)に雇われるところから始まります。みくりは、几帳面な平匡の注文を誠実にこなし、信頼を積み上げていきます。


 そんなある日、みくりの親が定年退職して田舎に引っ越すことが決まり、物語は大きく動き始めます。なぜなら、収入がほとんどないみくりには一人暮らしは難しく、結局、親についていかざるを得ないからです。家事代行の仕事は週1回3時間で時給2000円ですから、月当たり2万4000円ほどにしかなりません。


 平匡の家で働き始め、働きぶりを評価されたことにやりがいを見出していたみくりは、これを機に辞めるのも心残りで、平匡に奇策ともいえる方法を提案します。それが、住み込みで家事をするために契約結婚するという案でした。


 あまりに突拍子もない提案に平匡も最初はひるむものの、最終的に、この提案を受け入れます。自分が体調不良で弱ったときに家にいて介抱してくれることのありがたみを知ったのか、誰からも認めてもらえないとこぼしたみくりを認めてあげたいと思ったのか、あるいは単に試算した結果、自分自身が得になることがわかっただけなのか……。このときの平匡の胸のうちはわかりませんが、ともあれ、こうして夫を雇用主、妻を従業員として、家事労働に給料を支払う「契約結婚」が成立したのです!


契約結婚は「昭和の結婚」と似て非なるもの



 経済的に考えると、仕事でお金を稼ぐことはできるけれど家事は苦手な男性と、家事は得意だけれど仕事でお金を稼ぐことが難しい女性であれば、結婚して、夫が仕事に専念して妻は専業主婦になり家事をすることがお互いのメリットになります。実際に、こうした結婚による夫婦の役割分業が昭和の時代にはうまく回っていました。みくりたちが始めた契約結婚は、夫が妻に「給料を支払う」という点は目新しいものの、やっていることは「昭和の結婚」と非常によく似ています。


 みくりの両親の栃男と桜の世代を思い浮かべてみてください。みくりの両親の年齢は正確には出てきていませんが、作中で定年を迎えているシーンがあることから栃男は60歳前後でしょう。作中に描かれた時代がドラマが放送された2016年と同時期だとすると、栃男が生まれたのは1956(昭和31)年頃になります。


 栃男が大卒だとすると、大学を卒業したのは1978(昭和 53)年頃。1973(昭和48)年の第一次オイルショックを経て年率10%を超えるような急速な高度成長は終わりを告げましたが、それでも年率4~5%で経済成長していた日本経済が元気な時期でした。


 当時の企業は、まだ週休2日制は一般的ではなく、土曜日も働くのが当たり前。1980年時点で米国・フランス・ドイツ(旧西ドイツ)の年間労働時間が1700~1800時間前後であったのに対し、日本は約2100時間と、世界的に見ても突出していました。家庭科を中学・高校で習ったことがなく(家庭科の男女共修化は平成に入ってから)、「男子厨房に入らず」をモットーとする人も多かった時代で、企業戦士として働くためには妻の支えが必須でした。


 一方で、今度はみくりの母親の桜をイメージしてみてください。


 桜は49歳の「百合ちゃん」の妹ですから、夫の栃男とはかなりの年の差があり、桜が高校を卒業したのは1980年代前半と考えられます。当時の男子は4割が大学に進学していましたが、女子の大学進学率は12%ほどにすぎませんでした。一方で、短大への進学率は約2割で、女子は四年制大学よりも短大に行くのが一般的でした。第2章の百合ちゃんの働き方のところでも触れますが、当時は男女雇用機会均等法の施行前で、総合職と一般職といった区別もありませんでした。女性は就職しても「腰掛け」とみなされて、会社で出世して年収を増やしていく道は閉ざされていた時代です。


 こうした時代背景の中、夫が外で働き、妻が専業主婦になるという「昭和の結婚」は非常に合理的で双方にメリットがあるものでした。妻が家事に専念することで、夫が仕事に専念でき、出世して給料を増やしていければ夫婦ともに豊かな生活を送ることができます。


 ただし、こうした「昭和の結婚」によって夫の年収が増えたとしても、それはいったい夫婦のうちどちらのものになるのかはわかりません。妻の家事労働の対価、もしくは「内助の功」といったものがいくらであるのかは明確ではありませんでした。みくりと(ひら)(まさ)はこれをはっきり契約で決めたことが「昭和の結婚」との大きな違いです。


主婦の給料19・4万円は高い?安い?



 ドラマの冒頭(第1話)で登場したみくりの「主婦」としての給料水準の月19・4万円はとてもキャッチーで、ドラマの放映期間中、この金額をめぐってインターネット上では多くの投稿が行われていました。


 生活費を渡されてその中でやりくりをしている専業主婦からみるとうらやましい金額だとする意見が多い一方で、仕事も家事も担っている「兼業主婦」からは仕事としてきっちり料理や掃除をするならば、むしろこの金額では安いという意見もみられました。


 一方、男性からは、とても月19・4万円など払えないという意見が多数を占める一方で、家事が完璧で文句も言わない、おまけにみくりを演じた新垣結衣のようなかわいい妻が手に入るならば──本当に払えるかどうかは別として──安いものだとする意見もみられました。


 男女双方から、19・4万円を高いとする意見、安いとする意見の両方がありましたが、メディア別にみると、比較的高齢層(40代~50代)が多く投稿しているとみられる「発言小町」や「Yahoo!知恵袋」よりも、比較的若い世代(20代~30代)が多く投稿しているとみられるツイッターの方が、月19・4万円は高いとする意見が多かったように見受けられます。

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