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自由をいかに守るか ハイエクを読み直す
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生き方・教養
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1 自由主義こそが経済繁栄を生む──[第一章 見捨てられた道 The Abandoned Road ]

『自由をいかに守るか ハイエクを読み直す』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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わが党の綱領の基本的論点とは、利潤を追求する自由企業体制がわれわれの時代に失敗したということではなく、それがいまだ試みられてもいないということなのだ── F・D・ルーズヴェルト
A program whose basic thesis is, not that the system of free enterprise for profit has failed in this generation, but that it has not yet been tried. ‐ F. D. ROOSEVELT. (p. 10)


 第一章の章扉にフランクリン・ルーズヴェルトの言葉が引用されています。ルーズヴェルトはニューディール政策を採用した大統領ですから、どちらかといえば左のほうだったのですが、その人でさえもアメリカでは自由企業の体制が失敗したのではなく、まだ試みられてさえいなかったというようなことをいっている。このことが本章においても、基調になっています。

われわれは自分たちのことは棚に上げて、そのほかのことを責め立てるものだ
... we naturally blame anything but ourselves. (p. 10)


 自分たちは自由、正義、繁栄を増大させるために努力してきたのに、現実には隷従と悲惨な生活が発生しているのは、何か邪悪な力が働いてわれわれの意図を挫いたのではないか──こういう雰囲気が当時の社会を支配していたとハイエクは指摘し、しかしながら本当のところ、大切にしてきた理想のいくつかを追求してきたことが裏目に出たのであり、われわれが誤った結果だ、と真の解答を示しています。

 第二次世界大戦中の目標として、イギリスは「自由」「民主主義」という理念を掲げたが、その戦前の時点でイギリスにおいてさえ、それらは脅かされており、他の国ではすでに破壊されていたとハイエクはいいます。

 これは序文にも詳しくありましたようにイギリスは思想的に後進国であるという立場からの発想です。社会主義思想はすでにヨーロッパで試みられ勝利を得ており、なかでもドイツとイタリアではその変化が早く実現してしまったが、幸いなことにイギリスは遅れているからドイツのようになっていないにすぎなかったのだというわけです。そのためドイツのナチスとイギリスの理想との衝突が避けがたくなっただけであり、実はイギリス国内でも同じことが起こっていて、そちらのほうが勝ちつつあるという説明を、ハイエクは展開しています。

 そして、全体主義体制を樹立させた思想上の傾向は全体主義に屈したドイツのような国だけにあるのではなく、イギリスも着実にそちらのほうに向かっており、戦争に連合軍が勝ったときには、この基本的な問題に直面しなければならなくなる、とハイエクは予言しました。そして、この予言は的中し、まさにハイエクがここで指摘したことが戦後のイギリスで起こりました。すなわち、労働党が勝って政権を握り、私有財産廃止のほうに(ばく)進したのです。

 これは戦争が終わる前のイギリスの状況を見事に見通した、まことに先見的な洞察が示された箇所だと思います。

 ちなみに、戦後のイギリス政治は「ゴー・ストップ」といわれ、「ゴー」とは労働党の政策で、「ストップ」は保守党の政策だというのが従来の解釈でした。しかし、どちらも同じ方向に行くものであり、単にスピードの差だったということがよくわかってきました。つまり、同じ方向に向かって労働党は早く進もうとする。保守党はそんなに早く行くな、というだけの差だった。結局、保守党は自信がなかったので、労働党に反対するけれども、代案としては「早く行くな」としかいえなかったにすぎず、本当に保守党が「ストップ」をかけて進行方向を変えたのは、サッチャー首相の時代になってからでした。結局、戦後のイギリスにおける労働党と保守党の違いや対立は、ハイエクが指摘した第二次世界大戦のころのヨーロッパにおけるイタリア・ドイツ対イギリスという構図と同じだと考えていいでしょう。
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