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自由をいかに守るか ハイエクを読み直す
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生き方・教養
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4 「統制」と「保護」は発展を阻害する──[第四章 計画の「不可避性」 The “Inevitability” of Planning ]

『自由をいかに守るか ハイエクを読み直す』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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文明のありようが複雑になればなるほど、個人の自由はいっそう制限されるようにならざるをえないと最初に主張したのは、われわれである──B・ムッソリーニ
We were the first to assert that the more complicated the forms assumed by civilization, the more restricted the freedom of the individual must become. ‐ BENITO MUSSOLINI. (p. 43)


 章扉にムッソリーニのエピグラフがありますが、ファシズムにせよナチズムにせよスターリズムにせよ、全体主義とはムッソリーニが自慢しているようなもので、ハイエクはこれと反対の立場を主張しています。

その神話は、意図的につくられているのだ
The myth is deliberately cultivated.... (p. 43)


 これまでの章において、西ヨーロッパにおける文明の進歩は自由の幅を広めるという方向に進み、一九世紀の半ばごろから一転してドイツあたりから始まった全体主義のほうに流れていったことが述べられました。本章では、それが決して必然的なことではないことを明らかにしていきます。

 まず、独占と計画化に向かう傾向は半世紀にわたってなされてきた宣伝によってであるという見解をハイエクは示します。ハイエクは座談の折にもよく「社会主義者は約一〇〇年間、口を開けば自分たちの信念を語ってやまなかった。これが結局こうなった」と話しているのを、私は耳にしました。

 こうした宣伝の結果、唯一の選択として「民間独占体による生産管理をとるか」「政府による統制をとるか」しか道はないとする信念が生まれたが、これはマルクス主義者の主張する「産業集中」という教義から導き出されたものだとハイエクはいいます。「民間独占体による生産管理」とは戦争中から戦後しばらくの間の農協を考えてもらえばいいでしょう。「政府の統制」というのは普通の経済統制で、われわれが戦争中体験したことであり、共産主義国家でやっていることです。

 ただし、一九四〇年(昭和一五年)ごろをさかのぼる過去五〇年間に独占が加速度的に成長したことや、競争のルールが制限されるようになった分野が増えたことを否定できないとハイエクはいっています。たとえば、アメリカに自動車会社がたくさん存在した時代がありました。それがだんだん少なくなっていくという流れになりました。この流れがテクノロジーの進歩による必然的な結果だという説があるのですが、それに対して、この現象は多くの国々で推進されてきた各種の政策の結果にすぎないとハイエクはいいます。つまり、テクノロジーが進展すれば寡占になるというよりは、むしろ全体主義のマインド・コントロールにかかったような政策が次から次へと出た結果として寡占にならざるを得なくなったという立場をとっているわけです。日本で本田宗一郎氏が四輪車をつくろうとしたときに、通産次官だった佐橋滋氏がはねつけた一件などは、政策が影響を与えようとした一例でしょう。新規参入を認めない理由は自動車会社が多すぎるというものでした。

 ところが、本田氏は「あなたの任期は長くて二年。延びても三年だろう。私は社長だ。何年だってやる」といって、ホンダは四輪車をつくったといわれます。そして、一九九七年の統計を見ると、アメリカで一番売れた自動車はトヨタのカムリ、二位はホンダのアコード、三位がフォードのトーラスですから、事実上、アメリカでは日本の三社が加わって六社の自動車会社があることになる。つまり、自動車会社は増えているのです。だから、だんだん寡占化が進むというのは一つのドグマであり、現実には増えてもやっていけるわけです。一方、社会主義的政策をとった国では自動車会社が減っています。イギリスは事実上なくなってしまったし、フランスは一生懸命応援しているけれども、経営的にあやしくなっています。

 それから、大量生産の効率性によって大企業が小企業に対して優越性を持つようになったという説はウソだとハイエクは断定しています。昔は大企業のほうが圧倒的に技術の蓄積もあって、下請けは弱い立場でした。ところが、二〇年くらい前から下請けが特化して高い技術を持ち始めました。これは二〇年くらい前の話ですが、トヨタの下請け会社が懇話会のような会を開きたいといったら、トヨタのある部長が「下請けと飲んでいるより……」というようなことをいった。
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