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自由をいかに守るか ハイエクを読み直す
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生き方・教養
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12 「反自由商業国」は破滅する──[第一二章 ナチズムの社会主義的な根源 The Socialist Roots of Naziism ]

『自由をいかに守るか ハイエクを読み直す』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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すべての反自由主義勢力は、自由主義的なすべてのものに対抗して結束している──A・メラー・ヴァン・デン・ブルック
All antiliberal forces are combining against everything that is liberal. ‐ A. MOELLER VAN DEN BRUCK.(p. 167)


 章扉に引用されているエピグラムには、社会主義的な考え、社会主義的政党は連帯しやすいということが示されています。一九七六年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン(Milton Friedman, 1912-2006)がまだ冷戦の時代に日本へ来たとき、私は通訳を引き受けました。食事のときのプライベートな席でフリードマンが話していたことですが、フリードマンが共産党を弾圧していた南米のある政府の顧問になったら全米的な反対運動が出てきた。ところが、共産主義圏だった東欧のある国の顧問になったときは何も起こらなかった。だから、左翼の連帯というのは恐るべきものがある、といっていました。今は胴元のソ連が潰れたからかなり弱まっていますが、中国がまだ残っています。

ドイツにおける社会主義と国家主義は、最初から密接にからんでいた
The connection between socialism and nationalism in Germany was close from the beginning.(p. 168)


 この章は本書を執筆した当時の状況を説明しているということを念頭に置いてください。ナチズムが発生するまでの過程で、われわれも知っている著名な学者の意見が関係していることに言及したところが特徴でもあります。

 まず最初に、人々の間に広まっているナチスが理性に対する反乱であり、知的論拠のない非合理的な運動であるという見方は誤りだとハイエクはいいます。このことは繰り返しいっていることですが、この章では最も明確にいっているわけです。では、ナチスとは何かというと、ナチズム(国家社会主義)は人類の思想の長期にわたる一つの発展が最高潮に達した結果として出てきたものだというのがハイエクの見方で、ナチスは優れて知的な運動の結果として生じてきたものであるということです。そして、ドイツだけでなく他の国々にもナチズムに影響を与えた思想家たちがいるとハイエクはいい、イギリスのカーライルなどの名前をあげています。カーライルは明治以来、日本でも非常によく読まれましたし、彼は確かに大きな名前で、当時としては珍しく政府年金ももらっていた思想家でした。しかし、ナチス的ではあったものの、ナチスをつくったわけではなく、まったく孤立した一人の思想家だったのですが、死後一〇〇年祭はイギリスではほとんどなきに等しかった。その他にはチェンバレン(H. S. Chamberlain, 1855-1927)、コント(Auguste Comte, 1798-1857)、ジョルジュ・ソレル(Georges Sorel, 1847-1922)などの名前もハイエクは記しています。

 ただし、ドイツでは一五〇年もの間、ナチズムにつらなる思想体系が繰り返し出現したが、第一次大戦以前にはそれが重要な位置を占めたとはいえないとハイエクはいいます。一部の思想家たちの意見だと見なされていたということです。ところが、この思想がその後に重要な位置を占めるようになるわけですが、その原因は第一次大戦におけるドイツの敗戦でもなければ、敗戦後の苦難でもなく、ドイツの国粋主義の高まりでもないとハイエクは見ています。では、何がナチズムに力を与えたのか。それは社会主義者たちの陣営から発生したとハイエクはいいます。当時は国境のしきいが高い時代ですから、社会主義が国家社会主義になるのは当然の成り行きでした。

 では、なぜ社会主義がドイツで強くなったのか。強力なブルジョア階級がドイツになかったことが一因だとハイエクは指摘しています。金持ちが階級としてないと駄目だということです。そして、そのドイツで自由主義的な要素を駆逐したのは、右翼と左翼の反資本主義勢力を軸とする結合であり、それは急進的な社会主義と保守的な社会主義の融合だったとハイエクはいっています。
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