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自由をいかに守るか ハイエクを読み直す
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生き方・教養
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15 穏やかな「世界連邦」のすすめ──[第一五章 国際的秩序の展望 The Prospects of International Order ]

『自由をいかに守るか ハイエクを読み直す』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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民主主義の有効性を見極めるすべての手段のなかでも、連邦制こそが最も効果的で適切なものであった。連邦制度は、主権を分割し政府に特定の確定権限だけを与えることによって、主権を限定し抑制する。この連邦制だけが、多数派だけでなく民衆全体の力を抑制しうる唯一の方策なのである──アクトン
Of all checks on democracy, federation has been the most efficacious and the most congenial.... The federal system limits and restrains the sovereign power by dividing it and by assigning to Government only certain defined rights. It is the only method of curbing not only the majority but the power of the whole people. ‐ LORD ACTION.(p. 219)


 最終章はハイエクがあまり書くことを意図していなかった章です。一四章までの社会主義経済、あるいは全体主義経済の批判を離れ、第二次大戦後の世界がどうあるべきかということが記されています。

 その後に生まれた国連はここに書かれたことに近い線で成立しました。現在までの活動の途中でそこから離れようとすると、ハイエクのこの章がものをいってとどまったところがかなりあります。

仮に、国際的な経済交流が、個人間ではなく、交易組織と化したすべての国家間で行なわれるようになれば、それは必ずや国家間の摩擦や羨望の念を引き起こす原因となる
... if international economic relations, instead of being relations between individuals, become increasingly relations between whole nations organized as trading bodies, they inevitably become the source of friction and envy between whole nations.(p. 220)


 ハイエクは人類の歴史で一番優れた意見が出たのは一九世紀だと、この時点では考えています。一九世紀には自由主義が出たからです。しかし、ナチズム、マルクス・レーニン主義、イギリスでいえば労働党のスローガンによって、自由主義が二〇世紀になって放棄され、そのために世界が最も手痛い打撃を受けた分野が、国際関係だったと指摘します。

 そして、世界が自由主義経済からブロック経済に移行したことが述べられています。自由主義経済を離れ、国家が自分だけで独立してやっていこうとすると、必然的にブロック経済になり、それが深刻な国際的摩擦を発生させたとハイエクはいいます。ブロック経済というのは、他国にどんな被害を与えても自国の利益に望ましい政策を実行するという体制であり、そこでは国際的秩序や持続的な平和はほとんどなくなってしまうとハイエクは指摘します。貿易が個人間でなく国家を主体とした流通になるから、経済的なもめごとは必ず国家間の摩擦になってしまうということもハイエクは記していますが、確かに個人が貿易している限りは会社対会社のもめごとですから、妥協をいくらしてもいいわけです。一〇や二〇のもめごとを起こしても戦争にならない。しかし、ブロック経済になると、常に国対国になる。これはもめたらすぐに戦争になりやすい。つまり、ブロック経済は最も戦争に近い状況であるというわけです。

 だから、市場や資源を求める自由競争ではなく、国家なり組織集団なりが交渉すると国際摩擦は減少するというのは致命的に危険な幻想だとハイエクはいいます。国家なり集団間の交渉はそれぞれの力比べになってしまうからです。日本が大戦に入り込んだのも、アメリカのスムート・ホーレー法(一九三〇年)やイギリスのオタワ会議(一九三二年)によるブロック経済化に対抗する国策を進めたからでした。
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