読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1170818
0
フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか 「性の商品化」と「表現の自由」を再考する
2
0
0
0
0
0
0
政治・社会
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
2 「性差別」と認知できなくなっている「問題」

『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか 「性の商品化」と「表現の自由」を再考する』
[著]香山リカ [著] 北原みのり [発行]イースト・プレス


読了目安時間:30分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


表象における女性〜会田誠・萌えキャラ〜


香山 今日は「(あお)()()メグ」12のお菓子を持ってきました(笑)。もちろん非公式キャラのまま、商品化されているようです。



北原 こういう萌えキャラって、骨格よりむしろスカートのシワや乳房の膨らみを表現する影で体を表現している。どれだけエロティックな皺や影を描けるかが肝なんでしょうね。

香山 この、ヒモをほどくような手がツヤ感ですね。

北原 行政がこういうの出す度に絶望的な気持ちになりますが、それって私が「慣れていない」だけなんですかね。


 今日は性表現の話をしたいな、と思うのですが、香山さんは会田誠さんの作品については、どのように見えていますか? こういう碧志摩メグと日本現代美術界の巨匠の感覚、実は根底で繋がっているのかいないのか、ということ考えているんです。

香山 村上隆さんの作品も同じ文脈で語れるでしょうか。フィギュアかアートか、と議論に……。

北原 村上さんのはアートというか、お商売だと思ってます。

香山 国際アート市場でとても高く売れた作品もありますよね。

北原 そうなんですか。

香山 まず村上隆さんの作品は、アートとして何億円という値がついたこともありました。村上隆さんはとても戦略的な方で、アート界でどうすれば評価が上がり、市場で高値が付くかを実践すること自体が作品になっている気がする。とにかく抑えがたい衝動があって作った、というタイプのアーティストではないですよね。


 これも学生と議論するんですが、モートン・バートレットってアメリカ人の芸術家がいるんです。80歳くらいで死んだ後、家から12体くらいの女の子の人形と3体の男の子の人形が出てきたんです。この人は生涯独身で孤独な生活だったんですが、人形も衣装も小物も手作りして、歯も一本一本作って入れていくというすごく精巧に作品を作っていた。「避暑地で読書している女の子」といった設定をつくって、写真を撮ったりして。彼はそれをどこにも発表していなかった。自分の単純な楽しみとしてやっていたんです。


 これを学生に教えると「すご〜い!」とか言うんだけど、でも見ていくと写真の中には微妙にエロな写真もあるんです。体にひっついている水着とか、シャワーから上がっている子とか。それを無邪気と見るのかエロと見るのかはわからないんですよね。

北原 あぁ……。

香山 これって最終的には、犯罪か変態かみたいなところに行くわけです。「彼は変態です!」と言う学生は結構多い。肯定的に捉えると「家族がいないから自分で人形を作って囲まれて家族の雰囲気を楽しみたかった」という良い話にもできるんですが、「幼女ばかりこんなに精巧に作るのはおかしい」という話にもなる。ヘンリー・ダーガーも「これはアートだ」と言う人は多いんだけど、「これはどんな人が描いたんだと思います?」って聞くと、「40代女性」って答える学生も多くて。

北原 へえ。

香山 それで、「いや、これは80代で死んだおじいさんが描いたんですよ」と教えると、急に「じゃあ変態じゃないか!」って言う子もいたりして。でも、私はダーガーやバートレットはアーティストだと思っていて、それは共通点として生前は誰にも見せなかったということと、自分の思いとしては誰にも知られないまま葬り去られても全然文句なかったわけですよね。だから、それは抑えがたい衝動で人形を作ったり絵を描いていたりしたわけです。もちろん現実生活では犯罪的行為はしていなかった。

北原 まあ、していたとしても、もうわからないでしょうけど(笑)。でも、私も村上隆さんや会田さんの動機はどうであれ、あれはアートではないとまでは思っていないんです。それよりも会田さんとか村上さんの作品が高く評価される、売れる社会が怖いんですよね。

香山 そこは私は少し違う。アートという枠組みで発表されている以上、会田誠の作品はアートとして扱ってよいと思うのです。おそらく会田さんは、これがウケるからやってやれ、ということではなくて、もっとコンセプチュアルなものとして作品を作っていると思います。

北原 バートレットやダーガーが生前に作品を表に出せなかったのは、これを出した時に自分の評価が下がることがわかっていた。だけど会田さんの場合は少女を切り刻んだり、制服の女の子をジューサーにかけたりとか、ああいう作品を世に出しても評価が下がるのではなく、芸術家として評価が上がるこの社会が怖いと思った。誰にも理解されない孤独の病的な変態作家、もしかしたら天才だったかも? ではなく、天才作家として評価される現代日本社会の問題だと思っています。

香山 社会全体が受け入れているというより、あくまで制度としてのアートの中で、と考えてはダメですか? 会田さんには安倍政権を批判しているといわれる作品もありましたが、デモではなくてアートとしてのレジスタンスということではないのでしょうか。あるいは、アートの限界に挑戦している。それまでを社会的な文脈で「変態」と言って禁じてしまうことには、私は違和感を感じますね。

北原 私は制度としてのアートの権力や、ジェンダー問題もあると思います。それに、ロリ表現が挑戦になるとしたら、それこそ醜悪だと思います。なぜ少女で挑戦しなければいけないのかなと。セックスや暴力表現を、タブーを破る反権力として描くのは、繰り返し男の表現者がやってきた凡庸な手法じゃないですか?

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:12325文字/本文:14549文字
      この記事を収録している本
      レビューを書くレビューを書く
      この本の目次