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フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか 「性の商品化」と「表現の自由」を再考する
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政治・社会
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4 性売買と愛国

『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか 「性の商品化」と「表現の自由」を再考する』
[著]香山リカ [著] 北原みのり [発行]イースト・プレス


読了目安時間:30分
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「威張っている女」がいない


香山 最近、ある役所の女性が言っていたんですが、そこは部長クラスの男性と女性がそれぞれいて、何もわからない新人でさえ、いちばん重要なことについては「これ、部長どうしたら良いですか?」って必ず男のほうに聞くそうです。彼女に聞くのは、誰かがお土産を買ってきた時に「これ、分けますか?」とか。

北原 あはははは!(笑)

香山 本当にギャグみたいな話なんですが。若い世代なんてそんなに「女は家庭、男は仕事」というわけでもないのに、お土産を分ける包丁のありかは女性部長に聞く。いつの間にか重要なことは男が決定するって叩きこまれているんですよね。「どうしてそうなっちゃったんでしょうね」って、その彼女は言っていましたが。若い人たちなんて、私たちよりもよっぽど男女の役割には区別がないって教えられてきているだろうに。

北原 「威張っている女」がいないの、大きいですよね。威張るのがいい、ということではなく、媚びずに堂々としている女が政治家を見ていても本当に少ないなー、って思います。


 先日、『白い花を隠す』(Pカンパニー 2017)という戯曲家の石原燃さんが書いたお芝居を見たんです。2001年に実際に起きたNHKでのドキュメンタリー改ざん事件を題材にしたお芝居です。モデルになったのは、当時NHKの関連会社にいたディレクターの坂上香さんで、天皇の戦争責任を問い、「慰安婦」問題を裁く女性国際戦犯法廷のドキュメンタリーが、安倍晋三氏と故中川昭一氏の介入で、めちゃくちゃに編集されていきます。今のメディアの問題にも通じると思いますが、メディアが萎縮し、自粛していった現場を、当時を再現するように描いていました。


 面白いのが、坂上さんの役を男性が演じていたことでした。なんで男性にしたのかは、わかりません。ただ、舞台上で上司に向かって怒鳴り吠える男性の俳優を観ながら、これが女性だったら怒鳴る演出になっただろうか、またはもし女性だったら、この怒りはさらに「慰安婦」問題と絡まり、性の問題としてより複雑になっていくだろうと考えました。また、現実の世界では、坂上さんの上司は男性でしたが、お芝居の中では女性が演じていました。テレビ制作会社を経営する60代くらいで、男口調で部下を叱咤激励する役です。女のままでは、ストレートな怒りを表現できない、男言葉で初めて部下を怒鳴りつけられる。そこにすごくリアリティを感じたんです。


 そんなことを考えながら、サフラジェット19世紀末から20世紀初頭にイギリスで活動した女性参政権を得るために戦う女性たちのこと)についての映画『未来を花束にして』(イギリス映画 2015)を観に行ったんですが、すっごくいい映画でしたね。それなのにパンフレットに書かれていた俳優たちのインタビューの日本語訳がひどかった。


 1910年代のサフラジェットに対する敬意を込めて女性監督がつくった映画なのに、監督とか俳優のインタビューが全部「〜だわ」「〜よ」っていう語尾ですよ。「まだこれやるのか!」って思ってしまったわよ! 力が抜けました。権利を訴えるような強い内容の場合だと特に、女言葉にしないと性別間違えてしまうかな、とか訳者は心配になるのかな。女は男を刺激しないように「主張」することを求められてるので、当然、この社会では、女性のリーダーのイメージがわきにくいですよね。そういう中で、モノ言う女への嘲笑や批判は、どんどん深まっている側面もあります。

香山 80年代、90年代は世の中が「これからはこういう世の中になっていく」「変わらなきゃ」という空気の中で、フェミニストに対して誰が何を思っていたのかはわかりませんでした。でもネット社会になって匿名でみんながモノを言えるようになったら、当時から「こいつら面白くねえな」と思っていた人たちの不満を一気に噴出させている感じがあります。

北原 そうですね。

香山 でも今は、「日本会議」とか「日本のこころ」の人たちが、大きな声で「女はこうでなくてはいけません!」とか言うようになっちゃいましたよね。


 その一方で、衆院選に自民党から出馬して当選した杉田水脈さんのような右派の女性は意外と声がデカい。櫻井よしこさんもそうかもしれませんが、女性で「女はこうあるべき」と言っている人が、男性が良いとする女性像を変な意味で実現している感じがあります。沖縄で基地反対派を糾弾している我那覇真子さんとかね。


 だから、みのりさんもそうかもしれませんが、私や辻元清美さんなんかが表立って叩かれる。これまでは陰ながら「あいつら、なんだよ」と思っていても、「とにかく今は言っちゃいけないみたいだ」という感覚でいた人も、今やそれを隠さなくなっちゃいましたよね。石原慎太郎が言ってきたような差別感情を全く隠さないみたいな。

北原 心の中の慎太郎を解放しちゃっている(笑)

香山 そうそう。そこでフェミニスト的な人がどういうふうに戦略的にやっていくかというのは……。

北原 フェミ的なつながり、増やしていくしかないのかなあ。


権力とつながるLGBTの運動


北原 私の会社で働きたいと言ってくれる人たちって、フェミニズムに関心があるという人は多いんだけど、最近、どんな関心があるんですか? と聞くと「セクシュアルマイノリティのこと」と答える人がとても多いんですよね。


 今の若い人たちにとって、フェミニズムが女性の権利拡張運動だったり、命かけて闘っていたような運動だという認識って、もうないのかな〜と思ったりします。

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