なぜ仕事をするのか(しなければならないのか)など、ただの一度も考えたことがなかった。学校をでれば仕事をする。そのことになんの疑念もなかった。アルバイトをしながら「好きなこと」をつづけていく、といった頭など当時の学生にあるはずがなかった。なによりも「好きなこと」がなかった。志望する職種はあったが、ことごとく不採用に終わると、もう見境がなくなった。なんでもいいから仕事がしたい、と思ったのだった。他人事ならなんとでも言えたのだろうが、やはり、自分だけが世の中から取り残されていく、というおもいが焦りになったにちがいなかった。