わたしが勤めている会社は社員三十人に満たない小さな会社である。一般世間的にはまったく無名で、大企業に較べるといきなり「負け組」ということになろうか。採用試験に、ごくまれに大手商社に勤めていた者などが応募してくると、担当者が逆に萎縮してしまうという会社でもある。
小企業の社員であることは、世間の名だたる会社に較べて肩身の狭いことなのか。わたしは初対面のひとにはどんなひとであれ敬意を払うが、肩身の狭いおもいも気後れも引け目も感じることはない。たしかに大企業は社屋も資産も売上高も従業員数も巨大だが、そこに勤めている一人ひとりの人間は巨大でもなんでもないからである。