二階の世界における、たとえば政治問題、学問、世界情勢、抽象的思考などは、実際には恐れるには足りない。「知識」としてなら、それに接近することはそんなに困難なことではない。問題はただ、そこまで関心がもてるか、その必然性をどこまで自分に納得させることができるか、それをどこまで恒常的に維持できるか、だけである。
最後まで残る二階の住人は「他人」という存在である。もっとも到達することのむずかしい住人、関心はあっても関係化(関係づけ)することがもっとも困難な住人だ。わたしたちはたとえ自分と無関係とはいえ、他人が不幸に見舞われることを喜ばない。