ある新聞社の女性記者と話しているとき、「売春」についてどうおもうかと訊かれた。「自分の係累がすることは絶対許さないが、他人がするなら勝手にしなさいということか」みたいな曖昧な感じで答えると、こいつも例の二重基準野郎かというような表情で「ああ、ふつうですね」と言われた。「ふつう」も評判は悪いが、二重基準も評判が悪い。というよりも非難される。だがわたしは、なぜ二重基準が悪いのか、身に沁みてはわかっていないし、わかるつもりもないのである。
たとえば、ある評論家(学者)のように、「売春は善でも悪でもない、それは善悪の彼岸の問題だ」ということはできる。