「なーに考えてるんだ、あのバカ」というようなことをひとりがいう。するともうひとりが「なんにも考えてるわけねぇよ」と応じる。そう言って興じるこのふたりも相当なバカだといっていいが、なんにも考えていない人間はバカと能天気の代名詞のごとくである。
だが、自分は考える人間だと自負していても、それもあまりあてにはならない。生きていれば、頼みもしないのに、さまざまな方面から種々雑多な余計なプレッシャーがかかってくる。「自分」を脅かすものだ。少々「おれは自分の考えをしっかりもっている」とおもっていても、時代や世間からの圧力は相当に強力である。