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(2021/11/26 追記)

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京都の壁
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歴史
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第四章 都市論と京都

『京都の壁』
[著]養老孟司 [発行]PHP研究所


読了目安時間:19分
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京都は閉鎖的か?



 京都だけではなく、観光客が多くなる街はたいてい、住民が意地悪だとか閉鎖的だとか言われます。そうしなければ街を守れないからです。


 言われないのはロンドンくらいでしょうか。ロンドンは観光客だけではなく、住み着いてしまう人が多い。それでも比較的、ロンドンの住民は閉鎖的だとは言われません。でも、大きな目で見ると、EU離脱などという事態になっているので、国全体が閉鎖するほうに向かっています。


 移民の多さが、今回の離脱のいちばん大きな理由でしょう。それなら移民を受け入れているドイツは開放的なのかという話になりますが、ドイツは慣れているだけです。ドイツ人はロシアにも大勢住んでいるし、世界のいたるところにいますから。


 アメリカだってそうです。彼らも本音と建前が交錯していて、移民があれだけたくさん来ると、自分たちの仕事が奪われてしまうと騒いでいます。


 では、受け入れているから人が混じるのかというと、それがほとんど半永久的に混ざらないというのが今の風土です。ニューヨークは「人種のるつぼ」というけれど、実はモザイクです。ビルの一階が全部ユダヤ人の商店で、二階が全部イタリア人というように、細かく分かれているだけです。


 カナダのトロントでびっくり仰天したのがチャイナタウン。カナダは広々としている国です。街の中を車で走ったら、広々としているエリアにビルがところどころに建っている。そこに突然、真っ黒いものが現れました。道が人で埋まっていて、家と家のあいだにまったく隙間がないチャイナタウンがあったのです。中国人は中国人のコミュニティをつくるので、いろいろな国にチャイナタウンができていますが、カナダではそれが街のど真ん中にあったので驚きました。


『論語』と都市理論



 日本人は気がついていないのですが、中国は三〇〇〇年前から都市社会です。だから『論語』は都市の理論です。そういうふうに論語を解釈する人はいないけれど、私はそう解釈しています。


 論語の「子、(かい)(りよく)(らん)(しん)を語らず」というのは、自然のことは語らないという意味です。どうして雷が鳴るのかと聞かれて、孔子は返事をしなかった。当たり前です。当時の知識ではわかっていなかったのですから。「死ぬってどういうことですか?」と聞かれたら、「我、いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らんや」と。「生きるということもわかっていないのに、どうして死についてわかるだろうか」と返事をするのです。


 生老病死は人間が抱えている自然のなりゆきですから、その自然について、孔子は言及しません。そのかわり、「親が死んだら三年喪に服せ」と言うのです。これは自然のなりゆきではなく、人間の決めたルールだから実行できます。


 自然に依存しないで生きていけると思っている人たちは、人間のルールで社会をまわしていこうとします。それをきちんと規定しているのが『論語』なのです。


 私が不思議に思うのは、『史記列伝』のいちばん最初に出てくる話です。周が(いん)を滅ぼそうとしますが、これは要するに覇道ですから、道徳的には許されません。それで(はく)()(しゆく)(せい)の兄弟が武王を(いさ)める。結局、周朝になって兄弟は(しゆ)(よう)(ざん)(いん)(とん)生活を送り、ワラビを食べて生活するけれど、最後は餓死したというのです。

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