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[新訳]孫子
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生き方・教養
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第11篇 九地

『[新訳]孫子』
[訳]兵頭二十八 [発行]PHP研究所


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孫子いわく

 戦地・戦場によって、士卒の心理はさまざまな影響を受け、それが結果を左右するものです。その、多種類のパターンについて、以下に解説します。

 まず、(われ)の兵卒を動員した領地の近くが戦場となって合戦が起きますと、隷下部隊は、兵卒がそれぞれの自宅を心配するあまり、つい、バラけて消散してしまうでしょう。

 このような状況では、基本的に戦争を考えてはいけません。

兵頭いわく

 すぐ前に挿入されている「地形」のマニュアル的な浅薄(せんぱく)さとはガラリと変わり、本では、いかにも『孫子』らしく思わせる、深みのある注意が、次々に呈示されます。

 原文の「地」を、「状況」と読み替えることができます。地理のみが問題なのではありません。
「九」とは「多種の」という意味ですが、これを「9種類の」と誤解した無名の編集者がむりな細工をした痕跡もありそうです。


 次に、外国領土内に侵入してまだ距離がそれほどでない戦地では、士卒の気分は、なにかと軽いものです。

 このような状況では、部隊を途中で停止させると、徴集した農民兵たちが、故郷に逃げ帰ろうとするかもしれません。


 次に、彼我のどちらの部隊であれ、先にある地点を占拠した方が有利となる、そのような状況があります。大いに、その地点の先占を争うべきであります。

 最終目的地点に急行する途上で、敵の小さい要塞村のようなものを通りすがりに見かけても、そんなものにかかずらわって、攻撃しようなどと思ってはいけません。


 次に、(われ)の部隊がそこを通って行くこともできるし、敵の部隊がそこを通って来ることもできる、誰でもが交通しやすい地域があります。

 そのような地域を、敵に利用させないようにすることは、無理です。


 次に、3つ以上の勢力が支配力を重複して及ぼしていて、(われ)がそこへ敵部隊よりも早く到達できれば、おびただしい人民をわがものにできる、そんな地域があります。

 このような地域では、すべての有力者とよしみを通ずるようにしなさい。


 次に、(われ)の部隊が外国領土内に深々と侵入し、経路をふりかえれば、外国人がたてこもる要塞都市や、敵の警備隊が立ち寄る村がいくつもあるという、そんな戦地となりますと、士卒の気分はすっかり重いものです。

 このような状況では、兵隊たちに村々を略奪させ、糧秣の不自由をさせないようにしなさい。


 次に、山が(けわ)しく植生は進みにくく、あるいは地盤が水びたしの悪路をどうしても通って行かねばならぬ、そんな場合もあります。

 そのような状況では、とにかく早く通過してしまうことです。


 次に、周囲に障害があり、その中へ入り込む通路は狭くるしく、そこから出て帰国しようとすれば遠回りになってしまう、そして、少数の敵部隊が多数の(われ)の部隊を攻撃できる、そんな戦地もあります。

 このような状況では、部下を意図的に敵の包囲下に置いて奮戦を促したり、敵将のたくらみのその裏をくような思いきった奇策が、(われ)の指揮官に求められます。


 次に、すばやい合戦を無我夢中になってしおおせた場合にのみ生き残ることができ、すこしでも怠け心を抱いたらば殲滅されてしまう、そんな生死のガケっぷちに立たされているということが、将兵の誰にでも納得できるような状況もあります。

 このような状況をこちらから求めてこそ、徴集農民兵からなる(われ)の部隊の上下は一致団結してひたぶるに闘い抜くほかなくなるのであります。

兵頭いわく

 読者は原文の6番目の「死地」という字面から、地獄のような、忌避すべき場所を連想するかもしれませんが、孫子に言わせれば、その状況こそ、当時の指揮官たちが希求する価値のある天国のひとつだったのです。ネガティブな言葉ではなく、ポジティブな、ただし、稀にしか得られず、指揮官じしんも命を捨てるかもしれないという極限状況。そんな語感です。

 なにしろ、そこでは敵国人が(われ)の投降をうけつけてくれないのですから、「逃げるな」とか「最後の一兵になっても戦え」とか督励せずとも、農民兵たちが勝手に団結して死に物狂いの戦闘をやって敵に最大限の脅威を与えてくれますよね。
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