『国語は語彙力! 受験に勝つ言葉の増やし方』
[著]齋藤孝
[発行]PHP研究所
四字熟語と慣用句はまとめて仕入れる
「言語道断」「孤軍奮闘」といった四字熟語や、「猫の手も借りたい」などの慣用句は、日本人の教養の基本ともいえるものです。
四字熟語や慣用句は、いろいろな本を読んで少しずつ覚えていくよりも、四字熟語や慣用句を集めた本を1冊読んで、100、200という単位で一気にまとめて覚え込むのがポイントです。
四字熟語は、それぞれの言葉が呼び起こすイメージや語源がじつにおもしろいですね。たとえば、「四面楚歌」は、まわりがすべて敵ばかりで味方がいない状態という意味ですが、この文字からは想像もつかないと思います。
この言葉は、古代中国の故事に由来しています。昔、楚と漢の二つの国が争い、楚の軍が漢の軍に包囲されました。楚の王は、まわりを囲む漢軍が楚の国の歌を歌っているのを聞いて、楚の兵が漢に降伏したと思い込み、もう味方はいないと絶望したという話です。
こうした由来がわかると、まわりが歌を歌っているなかで一人孤立しているイメージが鮮やかに浮かんできます。四字熟語や慣用句の本には、そうした語源なども書かれているので、それを楽しく読みながらまとめて覚えるのがおすすめです。
そのときに、声に出して読むようにすると忘れにくくなります。私も中学生のときに、そうやって四字熟語や慣用句をまとめて覚えたおかげで、大人になってから、物を書いたり話したりするときに不自由せずにすんでいます。
四字熟語の本1冊で一生困らない知識が身につくのですから、とてもコストパフォーマンスのいい勉強といえます。
また、私は、「我田引水」「針小棒大」「自画自賛」といった、本来あまりいい意味合いではない四字熟語に、あえて「力」という一字を加えて言葉遊びを楽しむことがあります。
我田引水とは、自分の田んぼにだけ水を引き入れることから、自分勝手にふるまうという意味ですが、そこに「力」をつけて「我田引水力」という言葉にしてみます。すると、自分の田んぼに強引に水を引き入れるようなすごいパワーという、前向きのニュアンスが出てきます。
たとえば、タレントの明石家さんまさんが出ているトーク番組を見ていると、話の流れを巧みに自分のほうに引き寄せ、一人でしゃべりたおしていますね。そんな様子を指して、「我田引水力があるなあ」と言うわけです。
そもそも我田引水という言葉の意味や、それがあまりいい意味ではないということを知らない人には、「我田引水力」という言葉のおかしみは伝わりません。言葉をたくさん知っていればいるほど、それを使う楽しみも豊かになっていきます。
ここがポイント!
四字熟語を覚えれば一生困らない
外来語に強くなる
日本語には、外国語の言葉がたくさん流れ込んでいます。語彙を増やすにあたっては、日本語のなかに定着している外来語、いわゆるカタカナ語にも意識を向ける必要があります。
時代とともに、新しいカタカナ語はどんどん増えています。
たとえば、尊敬するという意味の「リスペクト」も日本語に浸透していますね。「対戦相手をリスペクトする」といった使い方をよく耳にします。
また、「コンプライアンス」というカタカナ語を耳にしたことがありませんか。コンプライアンスとは、法令遵守、つまり法律や条例を守るという意味です。
この言葉は、おもに企業がルールを守って活動するという意味で使われます。このルールには、法律や条例だけでなく、社会的な決まりごとのようなものも含まれるため、「法令遵守」という訳語では、そうした意味合いをカバーすることができません。