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異次元緩和に「出口」なし! 日銀危機に備えよ
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経済・金融
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はじめに

『異次元緩和に「出口」なし! 日銀危機に備えよ』
[著]藤巻健史 [発行]PHP研究所


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 格差論で有名なフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が、『トマ・ピケティの新・資本論』(日経BP社)の中で以下のように述べています。

「ヨーロッパから見ると、日本の現状は摩訶不思議で理解不能である。政府債務残高がGDPの二倍、つまりGDP二年分にも達するというのに、日本では誰も心配していないように見えるのは、どうしたことか。(中略)われわれは日本の政府債務をGDP比や絶対額で毎日のように目にして驚いているのだが、これらは日本人にとって何の意味も持たないのか、それとも数字が発表されるたびに、みな大急ぎで目を逸らしてしまうのだろうか」


 この本の日本版が刊行されたのは二〇一五年一月。この文章が発表されたのは二〇一一年四月ですが、それから六年ほどたつのにトマ・ピケティ氏の心配は()(ゆう)に終わっています。


 そういう私も一九九〇年代後半から日本の財政への(けい)(しよう)を鳴らし続け、今や「オオカミお爺さん」扱いです。しかし本当にオオカミは来ないのでしょうか?



 先日、私のテニス仲間のマキさんに言われました。マキさんは最近まで中小企業の副社長(創業家)だった方です。「三年前、日本の財政破綻論を述べていたのは世界で藤巻さんを始めたった三人しかいなかったけれど、今や僕の周りはほとんどそうだね」。「世界でたった三人」は大げさだったにしても、漠然とではあるものの日本の財政に警戒感を持つ人は、大変多くなってきたと思います。特に経営者の間では、圧倒的に多くなったと認識しています。


 そりゃそうです。トマ・ピケティ氏ではありませんが、日本の累積財政赤字の大きさを見れば誰でも不安に思うでしょう。対GDP(国内総生産)比の数字は、今や、預金封鎖、新券発行のあった太平洋戦争直後とほぼ同じ程度にまで上昇してきているのです。



 ピケティ氏の母国フランスでは、最近オランド大統領が退陣しました。その時、日本の新聞は「(累積赤字の対GDP比を)サルコジ大統領時代の八五%(二〇一一年)から九六%に上昇させたオランド前大統領は失意の退任だろう」と書いたのです。


 フランスでは九六%で大統領が失意の退陣をするのに、二〇〇%を超えている日本の国民、新聞、首相が心配しないのはピケティ氏には不思議でならないのだと思います。


 フランスで財政が日本ほどに悪化していたなら財政破綻は間違いないでしょう。だからこそピケティ氏は、日本で何も起こらないのが不思議なのだと思います。



 フランスと日本とは何が違うのでしょうか? フランスではフランスの中央銀行がフランス政府を助けられないのに対し、日本では日本銀行が日本政府を助けられるのです。これが最大の違いです。


 フランス政府がいくら資金不足になっても、フランスの中央銀行はユーロ紙幣を刷って、政府の資金繰りを助けることができません。通貨ユーロはECB(欧州中央銀行)しか刷れないからです。ギリシャが今、その状態です。


 一方、日本では政府が資金繰り倒産しそうになれば、日銀が新しい紙幣を刷ることによって政府を助けることができます。国債との交換で政府に新しく刷った紙幣を渡すのです。今、日銀は実際にそれをやっています。


 中央銀行が国債を購入して政府の資金繰りを助けることを「財政ファイナンス」と言います。これは世界中の先進国のすべてで禁止されています。財政ファイナンスをやった国は必ずハイパーインフレを引き起こした過去の経験から、そのような規則を作ったのでしょう。財政ファイナンスの禁止は先人の知恵なのです。


 二〇一三年四月に始まった「異次元の質的・量的金融緩和(以下、異次元緩和)」は、まさにこの財政ファイナンスそのものです。政府は「異次元緩和」は「デフレ脱却のためにやっているのだから財政ファイナンスではない」と主張しますが、財政ファイナンスか否かは目的で判断するのではありません。行為自体で判断するもののはずです。


 政府が年間約一五〇兆円の国債を発行し、そのうちの約一二〇兆円を日銀が買っているのです。これを財政ファイナンスと言わずに何と言うのでしょう?


 日銀が入札後すぐに、より高い値段で購入してくれるので、金融機関は国債の入札に参加していると言われています。日銀への転売でサヤ抜きをしようと入札に参加しているのです。日銀が直接的に政府から国債を買うことを「引き受け」と言い、財政法第五条で禁止されています。まさに財政ファイナンスだからです。この「国債引き受け」と、今の「異次元緩和」、すなわち入札で民間金融機関に(サヤ抜き目的で)ワンタッチスルーさせて、日銀が購入するのと何の違いがあるのでしょうか? サッカーで言えば、直接フリーキックか間接フリーキックかの違いにすぎません。ゴールはゴールなのです。



 この禁じ手の「異次元緩和」のせいで、日本はこれほど財政状況が悪いのに財政破綻を(まぬが)れているのです。私に言わせれば「危機の飛ばし」です。ピケティ氏の心配が杞憂に終わっているのも、私の予想が外れ、私が「オオカミお爺さん」と言われているのも、この「飛ばし」が行われているからです。しかし、こんな事態が長く続くわけがありません。遠くへ「飛ばせば飛ばす」ほど、おできの破裂の衝撃は大きくなります。


 日銀が紙幣を刷れば物事がうまくまわるのなら、政府は国民から税金など取る必要がないはずです。必要な歳出はすべて日銀が紙幣を刷って(まかな)えばいいことになるからです。そんな夢みたいな世界なぞあるはずはないのです。


 この「異次元緩和」という「飛ばし」により、ついには日銀に危機が迫ってきました。今回のこの本ではその辺を中心に書かせていただきました。日銀が倒産すれば、その発行している紙幣は無価値になります。ですから、皆さんにとっても見逃せない大変な危機のはずです。

「え、中央銀行が倒産?」と思われる方がいるかもしれませんが、世界ではかつて例があります。ドイツのライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)がその例です。異次元の量的緩和で倒産し、現在の新しい中央銀行であるブンデスバンクが創設されたのです。その経験を踏まえてドイツは、「量的緩和」には今でも大反対なのです。

「財政の危機」からの飛ばしで日銀は世界に冠たるメタボになってしまいました。日銀のバランスシート(貸借対照表、B/S)規模は対GDP比で約一〇〇%と、ほぼGDPと同じ規模になってしまいました。バランスシートの負債サイドの大半は「発行銀行券と日銀当座預金」ですから、GDPと同じ量の貨幣をばらまいてしまったことになります。


 BOE(英国中央銀行)、ECB、FRB(米連邦準備制度理事会)のバランスシート規模はGDPの二五%~三〇%程度ですから、いかに日銀がGDP、すなわち国力に比べて貨幣をばらまいているかがわかります。


 他の中央銀行はこれからバランスシートを縮小しようとし始めているようです。この数日間(二〇一七年七月初旬)、世界中の長期金利が上昇を始めたのは、マーケットがそう予想しているからです。


 しかし日銀は、まだまだ異次元緩和をゆるめる気配がありません。というか、ゆるめようがないのです。ただでさえダントツのメタボがさらにメタボになっていくのです。



 日銀の出口論が、最近盛り上がってきました。この出口論とは、景気が過熱したりインフレが加速してきた時に、「日銀は短期金利を上げることができるのか?」「バランスシートを縮小できるのか?」「未来永劫バランスシートを膨らませざるを得ないのではないか?」という議論です。


 出口がないとは「ブレーキがない」ことですから、いったんインフレが始まればハイパーインフレにまっしぐらです。他国に比べ段違いに貨幣をばらまいているのですから、その可能性は充分あります。歴史の教えです。



 私は今後、日米金利差、特に長期金利の日米金利差の拡大で、円安ドル高が進むと思っています。円安になると、消費者物価指数(CPI)は日銀の目標である二%に容易に達するでしょう。そして、二%が安定的になったその時こそが日本の「Xデー」だと思います。

「目標達成だから異次元緩和をやめる」と言う日銀と、「やめると日本がギリシャ化し、資金繰り倒産をしてしまうから継続せよ」と言う政府とのバトルの開始です。


 異次元緩和を継続すれば、毎日毎日紙幣が天から降ってくるのですからハイパーインフレ必至です。サウジアラビアから原油を輸入している日本が、輸入のたびに裏で円紙幣を刷って渡していたら、いずれそのことに気がついたサウジアラビアは円では原油を売ってくれなくなるでしょう。それと同じです。



 今でも「日本の財政は大丈夫だ」と言うのは「大本営発表」だと思います。「政治家ならなんとかしろ」と言われても、残念ながら「もうなんともしようがない」ところまで来ています。


 私は異次元緩和は「()()貧を避けようとして()()貧になるからやめろ」と最初から主張してきました。「穏やかな円安政策が最高の景気回復策」「金融政策は伝統的金融政策の延長であるマイナス金利政策が有効」「どうしても量的緩和をやりたいのなら円国債の代わりに米国債を買え。出口があるから」などはこの二十年間の私の一貫した主張です。この主張を実現に結びつけられなかった私の力のなさを痛感いたします。惜しむべきは政府が、私のような金融の現場の意見を聞いてくれなかったことです。


 この()に及んでは、国民の皆さんにこの本を読んでいただき、正確に日本の財政状況、日銀の置かれた状況を理解していただくことが重要だと思います。多少なりとも危機への対処法があるからです。それは前回、PHP研究所から出した『国も企業も個人も今はドルを買え!』に書いたとおりです。この本でも再度それに触れています。


 逆に、突然悲劇に襲われると自暴自棄になってしまいます。事態の正しい把握は危機管理の初めの一歩です。

「大本営発表」を信じていると、救われる人も救われなくなります。今の日銀は勝てぬ戦いと知りながら、どんどん奥地へ侵攻していった「インパール作戦」と同じことをしています。南進すればするほど補給線が伸びきって被害は甚大になります。しかし戦線を縮小する勇気がなく、奥へ奥へと侵攻し続けているのです。「財政は大丈夫だ」の大本営発表を信じることなく、ぜひ自分の財産を守ることを考えていただきたいと思います。



 最後に申し上げておきたいことは、たとえXデーを迎えても、市場原理のおかげで日本経済は必ずや大復活するということです。大幅円安のおかげで日本経済は数年後には大復活するのです。「その日のためにドルを買って困難期をしのぎましょう」という私の主張は今も昔も変わりがありません。


 Fasten your seat belt, please. Good luck! です。



 二〇一七年七月

藤巻健史 

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