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異次元緩和に「出口」なし! 日銀危機に備えよ
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経済・金融
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第5章 遅きに失した「円安政策」と「マイナス金利政策」

『異次元緩和に「出口」なし! 日銀危機に備えよ』
[著]藤巻健史 [発行]PHP研究所


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財政赤字増大を食い止める打開策はなかったのか?



 異次元の質的・量的金融緩和によって、日本は()()貧(デフレ)から()()貧(ハイパーインフレ)になる道を歩むことになってしまいました。もはや、後戻りすることはできず、国民の皆さんは覚悟を決めるしかありません。


 しかし、それはわかったとしても、どうしても後ろを振り返りたくなると思います。


 果たして、一〇〇〇兆円を超える、途方もない財政赤字の増大を防ぐ手段はなかったのでしょうか。


 私の答えは、「あった」です。


 かなり早い段階から、以下の方法を講じていれば、ここまで財政赤字問題が深刻化せずに済んだと考えています。異次元緩和をする必要もなかったことでしょう。


 一つは、「為替政策によって、緩やかに円安へと誘導すること」。


 もう一つは、「マイナス金利政策をとること」です。


 マイナス金利政策のほうは二〇一六年一月二十九日にようやく導入が決定されましたが、このマイナス金利政策は本来のマイナス金利政策ではありません。異次元緩和とは日銀当座預金を極大化する政策、マイナス金利政策とは極小化する政策。一八〇度異なる政策なのです。質的・量的緩和をしたままマイナス金利政策をとるなど支離滅裂。効果など出るわけありません。


 ゼロ金利になった後、質的・量的緩和などせずにただちにマイナス金利政策にふみ込んでいれば、今頃日本経済は大回復だっただろうと思うと残念でなりません。


 後の祭りかもしれませんが、日本の将来につなげるために、本章ではこの二つについて解説していきたいと思います。


長期低迷の最大の原因は「円高」



 第1章でも述べましたが、日本経済はバブル崩壊以降、「失われた三十年」を送ってきました。一時的に回復を見せたことはありましたが、トータルで見れば惨憺たる状況です。日本の名目GDPは三十年で一・五倍にしか増えていません。にもかかわらず、歳出を三十年前の二倍に増やした結果、財政赤字は二〇一七年三月末の時点で一〇七一兆円、対GDP比で二三二%という、世界でも類を見ない莫大な額にのぼってしまいました。


 このような状況に陥らないために、政府は何をすべきだったのでしょうか。


 一つは、GDPが伸び悩んでいるのに合わせて、予算規模も抑えることです。すなわち、できる限りの民営化や規制緩和を図り、公助よりも自助に重きを置くべきでした。絶対的貧困層を救済する最低限のセーフティーネットを確立しながらも、生活に困っていない人へのサポートは抑えていく、ということです。アメリカで言えば、トランプ大統領の共和党が掲げている「小さな政府」政策です。


 小泉内閣の時に経済財政政策担当大臣などを務めた竹中平蔵氏の改革はこの方向だったと思いますので、彼の施策に私はおおむね賛成でした。


 もう一つは、予算規模の拡大に合わせて、GDPを二倍にする政策をとることです。アメリカやイギリスのような先進国でも三十年間で四倍以上にしているのですから、日本が三十年間でGDPを二倍にすることは、決して不可能な話ではなかったはずです。


 このように考えた場合、最も問題なのは、GDPを増やせなかったことだと思います。では、日本人という優秀な民族が、金融政策と財政政策をフル発動させたにもかかわらず、GDPを三十年間でたった一・五倍にしか増やせなかったのは、なぜなのでしょうか。



 私は、ひとえに「円高のせい」だと考えています。


 なぜなら、為替とは商品の値段そのものだからです。海外に商品を輸出する時、どんなに原価を下げようとも、為替の影響は避けられません。たとえば一〇〇円の商品をアメリカに輸出した場合、一ドル=二〇〇円ならば、アメリカでは五〇セントで買えますが、一ドル=一〇〇円と円高になれば、アメリカでは一ドル払わないとこの日本製品を買えません。値上がりです。この差は経営努力では埋められません。


 ですから、日本製品の売れ行きが落ちたのなら、値段(=すなわち円)を下げなければならなかったのです。一九八〇年代には世界シェアの五割以上を握っていた日本の半導体企業が全滅したのも、個別企業の経営の問題ではありません。


 にもかかわらず、日本政府は、長らく円高を放置してきました。為替政策をまったくしてこなかったのです。

「近隣窮乏化政策」といって、自国の通貨を安くして輸出競争力をつけ、近隣諸国を弱体化に追い込む政策がありますが、日本がしてきたことは、真逆の「自国窮乏化政策」です。近隣の中国や台湾、韓国にとっては大歓迎でしょうが、日本の輸出産業から見れば、逆援護射撃のようなものです。


 こうしたことから、私は、九〇年代から円安にすることを提唱していました。緩やかな円安でも、充分に輸出産業への援護射撃になると考えたからです。しかし、そのたびに、「企業の海外展開が進んで円安はもはや必要ない」「輸入品価格が上昇して国民生活が苦しくなる」「弱い通貨を望むとは非国民」などという反論をされました。


 その結果、輸出産業は以前の勢いがなくなり、GDPの伸びもストップしてしまったというわけです。


 また特にここで申し上げたいのは、為替の話をすると皆、輸出のことしか議論しませんが、その発想を変えなければなりません。


 円高は円で提供するモノ・サービス・労働力の値段を上げることです。悪影響はなにもモノの輸出だけに限らないのです。一番の打撃は、円高のせいで日本人の職場が失われ、賃金が上がらないことだと思います。これでは個人消費など増えるわけがありません。


 政府は経済界に賃金の値上げを要求していますが、計画経済でもないですからそんなことでは賃金は上がりません。賃金も需要と供給で決まるのです。

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