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第1章 想像力は、理想を現実にする力

『一流の想像力』
[著]高野登 [発行]PHP研究所


読了目安時間:44分
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分析と洞察の先に、無限の答えがある

 序章では想像力の例を見ていただきました。ここで質問です。

 あなたの想像力の大きさ、強さはどのくらいでしょうか? 毎日、どれだけの想像力を使って生活や仕事をしていますか?


 多くの方は、想像力について特に意識せず生活していたことに気がついたのではないでしょうか。そもそも想像力とはどんなものかと聞かれても、明確に説明するのは難しいと感じる方も多いでしょう。

 ここではまず、想像力がどんな力なのかを明らかにします。あなたが何の仕事をしているとしても、想像力は必ずあなたの役に立ちます。


 想像力と似たようなものに、洞察力があります。でも、想像力と洞察力は、実は異なるものです。今、私が研修で出会う多くの社会人の方々は、素晴らしい洞察力をお持ちです。その方々にさらに鍛えてほしい力、それが“想像の翼”、すなわち想像力です。

想像力が“プライスレス”をつくる

 クレジットカード会社のコマーシャルに、「お金で買えない価値(プライスレス)がある、買えるものはこのカードで……」というコンセプトのものがあり、人気を博しています。


 たとえば恋人との楽しいディナーのデート。

 あなたは、恋人はどんな料理が好みか、賑やかなレストランの目立つ席が好きなのか、窓辺の景色の見える席が好きなのか、あるいは隠れ家的な静かなレストランが好みなのか……といったことを、普段の何気ない言葉や所作から、探ろうとしますね。このとき、頭の中で、恋人のことを一所懸命に“分析”しているのです。

 次に、初めてのレストランだったら、メニューなどを事前にチェックし、料金やお店の雰囲気も調べておくでしょう。あるいは自分はどんな格好でいこうかとか、彼女にはどんな服装なら似合うと伝えようか、など、思いを巡らすはずです。ここであなたは、どうしたら恋人とベストな時間と空間を一緒に過ごすことができるかを模索し、“洞察”しているのです。


 そして、デートの当日。あなたは、相手の喜びそうな話題を選んだり、食事の進み方をそっと観察しながら、好きそうな食材やワインのことに触れていったりします。もちろん、恋人のファッションや小物に関してコメントすることも忘れません。あるいは、その場の雰囲気によっては、多くを語らず、黙って見つめ合っているだけかもしれません。

 いずれにしても、あなたの心のなかは、恋人とのこの時間を大切にしたいという思いでいっぱいになっているはずです。

 そして恋人もまた、同じ気持ちでその時間を共有しています。お互いの心が確かに通じ合っている時間。そのとき、二人は、幸せな世界に浸っていることでしょう。


 ワインにも料理にも値段がついている。しかし、この目に見えない幸福感には、値段をつけることなどできませんね。

 その幸福感こそ、豊かな想像力から生まれてくるものにほかならないのです。

 あなたが目の前の恋人の様子を見つめて、いまこの瞬間にどんな気分でいるのかを想像し、それに合わせて会話の内容やテンポを選ぶ。だからこそ、このような「プライスレス」なひとときを過ごすことができるのです。

 どれだけいいお店を探しても、どれだけこの日のために話題を用意して行っても、当日の恋人の気分に添ったアレンジやアドリブがきかないと、このような時間を過ごすことはできません。

洞察で止まっていませんか?

 あなたには、目の不自由な友人がいますか?

 ちょっと考えてみてください。

 街中の道路には、目の不自由な人のためにいろいろな取り組みがなされています。たとえば点字ブロック。行政の指導で、さまざまなところに配置されていますが、そこの上に自転車を停めたりする人があとを絶たないのです。

 点字ブロックは障がい者にとって必要であることは洞察できる。しかし、そこに自転車を停めるとどうなるかが想像できない。障がい者の立場に立って、立ち往生し困っている姿を思い描いたり、ぶつかって怪我をしたときの痛みなどを想像してみる力がないのです。

 駅のエスカレーターの手前に、車椅子がいったん止まるためのポールが立っているところもあります。企業や行政からすれば、安全性を確保するという観点から洞察した結果の対応だと思います。しかし、車椅子の人は、そもそも、エスカレーターは使いません。それよりも、彼らからすれば、健常者がエレベーターを使ってしまうために、自分たちが使えないということのほうが辛いのです。

 もしも行政や企業の担当者のご家族に、あるいは友人に、目の不自由な人がいたとしたら。おそらくですが、彼らの立場に立って、さまざまな場面で何が起こりうるか、どんなニーズがあるのか、どんな不安や痛みをかかえているか、より真剣に想像しようとするのではないでしょうか。


 またみなさんは、東京の地下鉄の席に、いつからかちょうどお尻が入る「くぼみ」がついたことに、気がつきましたか?

 これは、七人掛けの座席にちゃんと七人が座れるようにという配慮なのだと思います。その背景には、足を広げて乗ったり、荷物を置いたりするので、規定どおり七人の乗客が座れないという分析があったのでしょう。

 そこから、お尻に合わせた一人分のくぼみがあれば、そこに座らなくてはいけないし、荷物も置きにくいだろうという洞察があり、作られたものだと思います。そのこと自体は間違っているとは思いません。

 しかし思い起こされるのは、江戸しぐさの「こぶし一つ腰浮かせ」です。

 七人乗りの舟が、すでに七人の乗客でいっぱいになっていた。最後に来た女の子が困った顔をしていると、七人がいっせいにこぶし一つ分だけ横に動く。すると、ちょうど一人分のスペースができる。

 七人掛けの席に、八人の乗客が気持ちよく座ることができるのです。何とも粋で、優しい江戸っ子の計らいだとは思いませんか。


 しかし、地下鉄に七人用のくぼみを作ったことで、もう一人座らせてあげようと思ったとしても、それができなくなってしまった。

 八人目が座るかもしれないことを、想像しなかったのでしょうか。最近見ていると、ちゃんと七人が座っていることが多いので、思惑どおりといってもいいのかもしれません。

 しかし、引き換えに八人目の人に優しさを示すことができない仕組みを作ってしまったのかもしれないと、想像することはできないでしょうか。


 さて、みなさんは口紅をお使いになりますか?

 テレビを見ていると、最近は真っ赤な口紅とロングドレスで登場する男性もいますから、あえて「女性のみなさん」とは言いませんでした。

 この口紅ですが、工場で作られる工程で、さまざまな呼ばれ方をします。

 元になる原材料を扱うセクションでは「素材」と呼ばれます。ベルトコンベアーで段々と形が整ってくると「製品」と呼ばれ、箱詰めされて出荷される段階では「商品」と呼ばれます。

 それが化粧品店の棚に並んで初めて「口紅」と呼ばれます。化粧品会社は、色、形、品質、値段、好み、ファッションなどを総合的に分析して、マーケットが求めているのはどういう口紅なのかを洞察します。

 しかし、その口紅が、お店のカウンターであなたの手に渡るとき、あなたは口紅ではなく「夢」を買っているのだとは思いませんか? 人生を彩り、素敵な物語を紡いでくれる口紅という名の「夢」。毎日の出勤を明るい気分にするために、あの人との約束の日のために、年を重ねた母に笑顔になってもらうために、あなたは口紅を選ぶのではないでしょうか。

 我が家のバスルームには、カミさんが買い求めてくる「夢」のかけらがたくさんあります。まだ何とかなるに違いない(笑)、そんな夢を叶えてくれるのが口紅なのです。テレビでマツコ・デラックスさんの真っ赤な唇やヌードベージュの唇を見るたびに、この人は夢をカタチにするのがうまいなあと感心します。

 売り手は「口紅」を売っている。しかし買い手は口紅ではなく「夢」を買っている。そこに想像の翼がきちんと向いていないと、大きなギャップが生じてしまうのです。
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