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生きていくことの意味
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生き方・教養
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第II部 自分の弱さと向き合う

『生きていくことの意味』
[著]諸富祥彦 [発行]PHP研究所


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ヒント3 弱音を吐き、助けを求めるのも、一つの生きる“能力”である
――カウンセリングの神様、カール・ロジャーズの生き方に学ぶ


 辛くなったら“弱音”を吐こう。

 小さな見栄やプライド、世間体にこだわっていないで、

 まわりの人に助けを求めよう。

 早めに“弱音”を吐き、“人に助けを求めること”は、

 この困難な時代をタフに生きぬいていくのに必要な“能力”である。


死に急ぐ中高年の男性たち

 中高年の自殺者が急増し、大きな話題となっています。

 一九九八年の自殺者は約三万三〇〇〇人で、一日平均九〇人と過去最多。男性が全体の七割を占め、五十歳代が約八〇〇〇人と群を抜いて多く前年の約一・五倍。三十、四十代でも三割の増加。負債や事業不振などの「生活経済問題」や「勤務問題」を理由にするものが増えており、過労による自殺、ストレスからうつ病を引き起こした発作的自殺などケースはさまざまですが、この長引く不況、リストラによる雇用不安の問題がまさに中高年を直撃しているのです。

 しかし、自殺者の急増の原因を、不況という経済的な要因にのみ帰して考えるのはバランスを欠いています。実際は、自殺された方の大半は、程度の違いはあれ何らかの精神疾患にかかっており、特に約五割の方はうつ病を患っていた、ということがわかっているのです。

 つまり、不況やリストラといった経済的な要因は、もちろん、自殺の“引き金”としては大きな意味を持っていても、それは“直接の原因”ではなく、自殺に直結するのはむしろ、リストラという環境の変化によって引き起こされた“急性の精神疾患”であることが多いのです。

 そして、周知のように、たとえば数十億円も借金を抱えていて、傍から見ていると“俺が同じ立場だったら自殺しちゃうよな”と思ってしまうほどなのに、本人は嘘か本気か“どうってことねえよ”と笑っている人がいるのも、また事実。ここが人生の不思議なところですが、要するに、人間、リストラとか破産とかいった、厳しい状況に追い込まれた時はじめて、その人のほんとうの姿というか、生き方そのものが問われることになるのです。

 まじめで責任感が強く、すべてを一人でしょいこんでしまいがち。そして“AはA”“BはB”という直線的な考え方をするタイプの人は、仕事がうまくいっている時には実力をいかんなく発揮できますが、逆に、いったんペースが狂い始め“守り”にまわると途端に(もろ)さを露呈し始めます。逆に、まじめさも責任感もそこそこだけれど、仕事を一人で抱え込まずに上手にみんなで分担できる人、“AはたしかにAだけど、時と場合によってはBかもしれない”といった複眼的思考のできる人は、予測できなかったハプニングが生じたり、いろいろなことがうまくいかず守勢に転じても、そこそこうまく事態をきりぬけることができるのです。

 私たち日本人が今の困難な時代を生き残るには、大きな生き方の転換が求められます。つまり、硬くて脆い(はがね)のような生き方から、ゴムのような柔軟な生き方への転換が。

 ハプニングや事件をそれなりにうまく吸収し、新たなエネルギーに転換できる生き方。物事を“AはA”と一面からだけ見るのでなく、“AでもあるしBでもある”と多面的かつ複眼的に見る、しなやかなまなざしを持った生き方。そんな生き方への転換が求められているのです。

“うつ”をチェックしてみよう

 ところで、まじめで責任感が強く、すべてを自分一人でしょいこんでしまいがち、そんなタイプの人が陥りがちな心の病にうつ病があります。

 実は、自殺者の多くは何らかの程度、“うつ”の病にかかっている人が多いのです。

 ある中年男性は、最後まで仕事をまっとうしようとしたけれど果たすことができず、遺書にこう書き残して死んだといいます。
「恨むなら、俺と会社を恨めよ」

 忠誠を強要する企業とそれに律儀に応えようとする労働者。そんな関係の中で、会社を恨み、自分を責めながら、まじめな労働者が死に追いやられているのです。そして、そんなまじめな人間を襲う心の病がうつなのです。

 また自殺までいかなくても、この病のために実に多くの人が、まさにうつうつとした毎日を送っています。ある調査によれば、程度の差はあれ一生の間にうつ病にかかる人は、五%とも一〇%とも言われています。実に一〇人から二〇人に一人くらいの人が苦しむ心の病なのです。

 さらに、身体疾患を持つ患者の約二割が実はうつ病を併発しており、にもかかわらず大半の方はその事実に気づかず、治療を遅らせ病をこじらせている、という驚くべき事実があり、このきわめて重大な情報も、もっと広く知られるべきだと思います。まさかうつ病だとは思わず、ひたすら内科の受診をくり返し、その結果死を選択してしまう人も少なくないのですから。

 うつ病と聞くと、一生治らない精神病だと思われる方もいるでしょう。

 実は、それも間違い。うつ病は、精神病ではなく“気分障害”の一つ。早めに発見し早めに治療すれば、その大半が治る病気です。休息、薬物治療、カウンセリングといった治療をちゃんと受けると、軽症であれば、まず治る心の病なのです。

 つまり、軽いうつは“心の風邪”のようなもの。誰でも油断するとすぐかかるし、たいていは治るものの、なめて放っておくと一生を台無しにしかねない。そんな病なのです。

 そこで、御自身のために、そして御家族のためにも、ここで自分のうつをチェックしていただきたいと思います。

 まず、朝の気分はいかがでしょう。笠原嘉さんはうつ病を“朝刊シンドローム”と呼んでいます。朝の気分の重たさ、おっくうさは、うつ病の特徴の一つで、以前は楽しみにしていた新聞を読むのもおっくうになってしまうからです。そして夕方になると、徐々に気分も明るくなり、活動的になるのです。ほかに、次のようなことはないか、自己点検してください。


  ○いつもより早く目が覚める。特に深夜、なぜか目が覚めてしまう。

  〇人と会うのがいやだ。

  ○決断がなかなかできない。ものを決められない。

  〇自分に自信がない。

  ○この世から消えてしまいたい、と思う。

  ○性欲が落ちた。

  ○食欲が落ちて、胃がむかむかすることがある。


 私は医師ではありませんから、〜個以上あてはまる人は、などと診断めいたことは言いません。しかし、かなり思い当たる、という方は、できるだけ早く医師に診てもらって、仕事をきちんと休まれたほうがいいと思います。

 思い切って仕事を一定期間休む、薬をきちんと飲む、もっと楽で柔軟な考え方ができるようにする、の三つが、うつからの立ち直りのポイント。自分自身のためにも、家族のためにも、無理は禁物。できるだけ早めに、治療を受けましょう。

身近な人に弱音を吐こう――助けを求めることは大切な“能力”の一つ

 うつになりやすい人には、もともと、“まじめ”“几帳面”“完全主義”“自分を責める”“他人に気を使う”などの性格の持ち主が多いと言われています。こんなタイプの人は、ほかの人に弱音を吐いたり、人に助けを求めることも苦手です。

 このような人のことをカウンセリング心理学では、“被援助指向性”が低い人と言い、それをどうやったら高めることができるかが、大きな課題となっています。
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