ロジェ・カイヨワは、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』の仕事を受け継いだ形で遊びの研究に大きな業績を残したけれども、彼は遊びをアゴン(競争)、ミミクリ(模擬)、アレア(運)、イリンクス(めまい)の四つに分類した。その中でもイリンクスというカテゴリーを取り上げたことは、カイヨワの遊びの研究における最大の功績だと言われている。カイヨワはイリンクスについて、
「一時的に知覚の安定を破壊し、明晰であるはずの意識をいわば官能的なパニック状態におとしいれようとするもの」と定義している。この「めまい」を楽しむ例として、彼があげている遊びは、子供の「ぐるぐるまい」、メリーゴーランド、ぶらんこ、ワルツ、縁日の乗物機械、スキー、登山、空中サーカスなどである。