およそ、サーカスほど様々な意味がからみ合っている記号は少ないだろう。まず、その名の通り、サーカスは丸い世界である。リングも、動物の曲乗りの球も、ライオンがくぐる火の輪も、紙を貼った輪も、そして、一輪車も、すべてが丸い。すべてがつながっており、止まることはない。丸いということは宇宙のイメージであり、生と死を繰り返す時間のイメージでもある。また、丸い世界はメリーゴーランドや観覧車にも通じる。サーカスとは、遊園地と動物園の興奮を一つのテントの中に吸収したものだと言えよう。
おそらく、日本人として最もサーカスの意味を読んだといえる山口昌男氏は、サーカスこそは空間・時間の大胆なつくり変えと、絶妙なる道化の演技による日常世界の鍛えなおしという意味で、真の祝祭という名に価するイベントであるとし、新しい天地創造であるとまで述べている。