リングリング・サーカスを観て、ちょっととまどったのは、やたらと明るいことだった。それは、ぼくが今まで経験した日本の木下サーカス、コグレサーカスなどとはまったく別の、派手で華麗で陽気な世界であった。リングリングのことを取り上げたマスメディアも、みんな、「かつての哀愁の漂うサーカスとはまったくの別物なのだ」といった感じだった。
シャンソンやバレエの評論家として活躍した蘆原英了はサーカスにも並々ならぬ関心を抱き、サーカスに関するエッセイをいくつか残しているが、その中の『サーカスの道化』には次のように書かれている
サーカスというものは、たいへん古いものでございますけれども、日本ではいつもいわれますように、我々の子供時代、夕方など遅くなると、人さらいにさらわれてしまう、サーカスに売られてしまうというようなことがいわれていたんですね。