メトロポリタン・オペラ、スカラ座、ミュンヘン・オペラのような豪華さはないけれども、とても心暖まるオペラにクリスマス・イヴの夜に出会った。
お茶の水スクエアの中にあるカザルスホールが一九八八年十二月二十四月に開いた一周年記念コンサートで上演された「アマールと夜の訪問者」である。コンサートは第一部がFM東京少年合唱団によるクリスマス・キャロルで、第二部が「アマールと夜の訪問者」だった。イタリアのオペラ作家ジャン・カルロ・メノッティの作品で、彼は先に来日したミュンヘン・オペラの「コシ・ファン・トゥッテ」の演出も手がけている。メノッティは、メトロポリタン美術館に展示されている一枚の絵に触発されて「アマールと夜の訪問者」を作曲したという。その絵とはヒエロニスム・ボッスによって描かれたもので、「マタイ伝」第二章をモチーフにした、三人の王様がマリアに抱かれるキリストを礼拝している絵である。