映画「バベットの晩餐会」を観終わって、料理についてぼくが気づいたことが四つある。一つは、おいしい料理を十分味わうためには、普段は禁欲的というか質素である方がよいということ。この映画は、前半の質素な生活と後半の贅沢な食卓のダイナミズムを見事に描いている。
二つめは、料理は博物学であること。生きている海ガメやウズラの姿を見て感じた。ぼくはいつも思うのだが、生ガキや赤貝の刺身を最初に食べた人間は何と勇気があったのだろう。そこには空腹というよりも強烈な好奇心が感じられる。実際、横浜国大助教授の奥本大三郎氏などは美食の究極は博物学だとはっきり言っている。