『カラー写真・決定版 第二次世界大戦「戦闘機」列伝』
[著]三野正洋
[発行]PHP研究所
総論 2機種に絞った効率的な運用
第二次大戦でドイツは、1939年9月から45年5月まで延々と戦い続けた。相手はイギリス、カナダ、オーストラリアなどのイギリス連邦、フランス、ソ連、そしてアメリカである。
まさに世界の大国に無謀な戦いを挑み、完璧に敗れ去った。もちろんドイツ空軍ルフトバッフェは、その先兵として戦い、大きな消耗を強いられている。
それでも戦闘機に関して、この空軍は非常に効率的に運用してきたと言っていい。その最大の理由は、国力の強大な敵国と戦うといった事実をしっかりと把握し、生産すべき戦闘機の種類を極端に絞り込んだ点にある。
ともかく主力戦闘機は
戦争の全期間 メッサーシュミットBf109
後半 フォッケウルフFw190
で、これ以外にはほとんど存在しなかった。ただし終戦の1年前からジェット戦闘機Me262を実用化、実戦に投入している。
この画期的な航空機については、機会を見て別途解説したい。
さてドイツ第三帝国は、Bf109を3万機、Fw190を2万機製造した。
そしてこの2機種の戦闘機のみで、戦いを有利に進めることが可能と考えたようである。たしかに登場した頃には、両機とも世界の最先端の位置にあった。
それでも軍用機の進歩が、歴史上もっとも著しい時代とあって、その状況が長いあいだ続くはずはなかった。
この点、ルフトバッフェは次第に立ち遅れていったのではあるまいか。
さらに戦闘機の戦い方に関し、日本と反対の戦術を採用し、とくに戦争の前半でそれは裏目に出たような気もしている。
これものちに述べるが、主力のBf109があまりに旋回性能を軽視していたのでは、と考えられるからである。
またこれはイギリス、ソ連の戦闘機とも共通するが、日米のそれらと比べて、搭載燃料があまりに少ない。言うまでもなく、このことは航続力、滞空時間の不足をまねいている。
もちろん、広大な太平洋と狭いヨーロッパの戦域とでは、設計者にその要素をあまりに強く意識させすぎたのかもしれない。そしてこのことが戦争の勝敗に、少なからず影響を与えたはずである。
さらに後半に至ると、航空燃料の量と質が、両軍の戦闘機の性能、ならびに活躍の条件を左右している。日本ほどではないが、ドイツも燃料の確保に苦労し続けた。