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人間通でなければ生きられない
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生き方・教養
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まえがき

『人間通でなければ生きられない』
[著]谷沢永一 [解説]山野博史 [発行]PHP研究所


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人間通の時代




 現代の日本人にもっとも必要なのは、誰もが(にん)(げん)(つう)になるための自己訓練である。国内的にも国際的にも、我が国びとが人間通として成長する努力を、今や時代が強く要請している。


 しかし残念ながら人間通という言葉は、まだ通用語として認知されていないようだ。昭和六十年の暮に出た『新潮現代国語辞典』(新潮社)および『現代国語例解辞典』(小学館)には、食通という言葉は採られていても、成語としての人間通はどちらにも省かれている。


 そこで止むを得ず類比するならば、食通が、食べ物の味や多種の料理に通じていること、また、その人、グルメ、を意味するように、人間通とは、人間性の内幕や多種の性格に通じていること、また、その人、を意味すると言い得ようか。


 サマセット・モームの短篇「この世の果て」(増野正衛訳)の末尾において、ジョージ・ムーンは微笑しながら次のように述懐する──。

「真実と顔つき合わせて考え、それがたとえ不快であっても腹を立てず、人間性というものをあるがままに受け取り、それが馬鹿らしい時には笑い、悲しいときには誇張なしに悲しむことが皮肉屋だというのなら、多分私は皮肉屋でしょう。大抵人間性というものは、馬鹿げていて、悲しいものですよ。しかし、もし人生が君に寛大ということを教えたならば、人生には泣くことよりもむしろ笑うことの方が多いのがわかるだろうと思いますよ」


 要するに縮約するなら人間通とは、人間性をあるがままに受け入れる態度を指す。人間はかくかくしかじかであるべきだなどと、タテマエを振りかざして人を裁いてはならない。孔子は人間性とは何かという如き、抽象的な命題を論じなかった。人間性の奥行きは測り難いのである。


 今後の我が国は国際的に、重要な役割を果さねばならぬ。その場合に必須の前提条件は、他国それぞれの事情と立場を、実態に即して理解しようと努める度量である。それが出来るにはまず同胞の間で、相手の身になって思案する余裕が必要であろう。人々が寛大な人間通として成長したとき、初めて社会が成熟したと評し得るのではあるまいか。



 昭和六十一年二月

著 者 

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