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明日に希望をつなぐ 東洋のことば
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ルポ・エッセイ
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はじめに 〜明日に希望をつなぐ「道しるべ」としての東洋のことば

『明日に希望をつなぐ 東洋のことば』
[著]高田明和 [発行]すばる舎


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 この本の中でも取り上げましたが、「(あい)()よく(かい)(てん)の力あり」ということばがあります。すばらしいことばに出会えることは、時に、それまでの世界の見方を一変させ、あとあと振り返ってみれば、そのことばが人生の転機になったということがしばしばあるものです。実際、私の人生にもそういうことが何度もありました。

 私は過去において、自分の生き方に自信が持てず、苦しんだ時期があります。当時は、自分の将来を悲観的にしか考えられませんでした。このようなときに「よいことを考えれば、よいことが来る」という“積極思想”のことばを知り、このことばを口ずさんで生活しているうちに、次第に運勢が開けてきたという経験があります。また、別のことばで「恐れることは皆来る」も私に大きな影響を与えています。心配するとその心配事が実現してしまうので、なるべく取り越し苦労をしないようにしました。すると、人生を前向きにとらえられるようになったのです。

 現代は「情報化社会」といわれ、さまざまなことばが(はん)(らん)する時代です。たとえば、この本のような単行本と呼ばれる書籍一つとってみても、その刊行点数は何と、一日平均二〇〇冊以上なのだそうです。次から次へと情報があふれくる世の中にあって、本当によいことばがむしろ見えにくくなっているともいえます。

 新しい「ことば」も次から次へと生まれます。たとえば、年末になると新聞紙面をにぎわす「流行語大賞」。先日、二〇〇七年のノミネート語を新聞で散見しましたが、「偽装」やら「ワーキングプア」やら、この混迷する世相を反映したものがずらずらと勢揃いしました。中には微笑ましいものもありましたが、心の底から笑えたり元気になったりするものはありませんでした。

 よい意味でも、悪い意味でも、ことばには底知れぬ力があります。かつてこの国は「コトダマ(言霊)のさきわう国」といわれましたが、古来、日本人ほどことばに対して敏感だった民族はいないのではないでしょうか。

 よくも悪くもことばに力がある。それならば、よい意味のほうのことばをもっと私たちは積極的に取り入れるべきではないか。

 そのように思う人が多いからでしょう。名作古典の(ろう)(しょう)や写経などに、中高年のみならず、若い人たちまで関心を持ち始めているようです。

 戦後六〇年以上が過ぎ、「団塊の世代」と呼ばれる戦後生まれの人たちが定年を迎え、個人としても、社会・国家としても老いの入口にさしかかっている。そういう風潮の中で、もう一度古典をひもとき温めてみようという気運も起こっています。
「古典はつねに新しい」といわれます。時代の荒波を超えて受け継がれてきたものだからこそ、そのことばは、つねに新しい発見を私たちに与えてくれるのです。まさに「温故知新」です。そういう営みの中で起こるべくして起こる「よいことば」との出会いは、その人自身やその人の人生を変える力になるとともに、ひいては国やその国の歴史を変える力ともなります。

 わずか百数十年前にもそういうことがありました。幕末の志士や明治の元勲と呼ばれる人たちがそうです。彼らが後世に残したものを読むと、そこに漢籍や仏語あるいは禅語などへの深い造詣があったことがわかります。幕末の長州、松下村塾で若い志士たちに教えを授けた吉田松陰や、その弟子の高杉晋作ら、さらには維新回天の原動力になった、薩摩藩出身の西郷隆盛など。彼らが、西洋列強の外圧の中にありながら、東洋の一角に位置する(だい)(とう)(こく)の誇り高き国民として信念を貫くことができたのは、漢文や仏語あるいは禅語などの「東洋のことば」があったからではないか。その(えい)()が彼ら自身の血や肉となり、その人格と行動を支える骨となっていたからではないか、と思うのです。

 今回、新進気鋭の若手書家である武田双雲さんに書いていただいた「(にん)(ぬん)(とう)(とう)」ということばは、私がとりわけ好きな語の一つです。本文にも書きましたように、あれこれ悩むより、運を天に任せれば、むしろ(ほう)(はい)として勇気が(みなぎ)ってくる、という教えです。明日が見えないと嘆くより、まずは自分の(あし)(もと)をよく見ることが大事であると教えているようにも思います。

 本書で取り上げたものは、東洋の叡智たることばのほんのわずかなものでしかありませんが、どれも古くから日本人に愛されてきたことばたちばかりです。この本で取り上げたことばが明日に希望をつなぐ道しるべとなれば、著者として望外の喜びです。


2007年12
高田明和
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