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3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」成功への道
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ビジネス
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第2章 自社の「強み」とビジネスプロデュース

『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」成功への道』
[著]三宅孝之 [著] 島崎崇 [発行]PHP研究所


読了目安時間:28分
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◎「強み」はフックと回収エンジンのどちらに活用すべきか



 従来は自社の強みを、フックにすべきか回収エンジンのどちらに活用すべきかを考える必要はなかったが、この両者を分けて設計する以上、新たな重要論点になってくる。これが前述の質問3だ。



 大企業が事業創造を考える際に、フックと回収エンジンに求められる特徴を改めて整理すると、図2-1のようになる。



 フックは、色々な人を惹きつける付加価値が求められる代わりに、儲けなくても良いという「お許し」がある。逆に回収エンジンは、収益力としての性能が得られればそれで良い。アンコウで言うと、前者が(ちよう)(ちん)で、後者は口だ。


 差別性や強みは、フック(提灯)と回収エンジン(口)の、どちらにより必要なのだろうか。



 グーグルの強みはフックの検索エンジンやYouTubeにある。魅力ある検索エンジンやYouTubeが集客し、そこにくるユーザーを目掛けて広告を出すという形でお金を回収している。


 クックパッドの強みは豊富で質の高いレシピである。レシピを見ることは基本無料とし、たくさんの消費者を集めることに終始している。つまり、強みはフックとして使われている。一部のレシピやサービスは回収エンジンに組み込まれているものの、あくまで一部だ。



 強みや差別性はフックに活用した方がそのパワーを発揮する。しかし、強みをフックにする気持ちにはなりにくい。なにしろ、これまでの収益部門にコストセンターになってくれという話である。


 IBMが大型コンピュータの販売からサービス売りに業態を転換したという話は有名だが、現場の変革レベルはさぞかし凄まじかったことだろう。


 マイクロソフトもWindowsをフックとして無料提供するようになってきているが、一九九五年頃に無類の強さを発揮していたWindowsを思い起こすと、改革過程では想像を絶する苦しみを経たことだろう。その経営判断には頭が下がる。


 すべてを回収エンジンにしたいと思いがちな凡庸な経営者に、このような決断はなかなかできない。


◎欧州の携帯電話ビジネスで起こっていたこと



 過去に強みをフックに転化させ、市場での戦いを制した例として、一九九〇年代の欧州での携帯電話ビジネスをご紹介しよう。


 当時の欧州の携帯電話ビジネスの代表プレイヤーと言えば、ノキアとエリクソンである。彼らは欧州市場で圧倒的な強さを誇っていたが、日本の携帯端末メーカー(NEC、富士通、シャープ、京セラなど)の端末の性能には全く敵わないと冷静に分析していたようである。日本の携帯端末メーカーが欧州市場に本気で攻めてきたら、なす(すべ)もなく自分たちの携帯電話は追いやられ、倒産すると覚悟していたということだ。



 そこで、この二社が中心になって、次のような大仕掛けを一計した。

〓携帯電話のバリューチェーンのうち、端末側を完全に標準化し、そのレシピ(作り方)をオープンにすることで、誰でも端末を作れるという状態を作り出した。

〓一方、インフラ側である基地局(無線通信端末と通信会社の基幹通信網〈有線通信〉とを中継するインフラで、日本国内で言うと五〇万以上の数がある)は、標準化項目はゼロ。特許も全く出さないという徹底ぶりで技術を秘匿した。


 〓は、携帯端末の価値を大きく引き下げるという狙いである。


 当時の韓国プレイヤーは、まだ技術力も弱かったが、レシピ通りに作れば、それなりの端末を作って低価格で供給することができる。逆に日本の高度な携帯端末は、その仕様には合わない。


 しかも、欧州プレイヤーは、日本の携帯端末の仕様であるPDC方式とできるだけ異なる仕様にするために、わざわざ米国のモトローラからGSM方式の技術ライセンスを受ける決断をした。欧州プレイヤーはGSM方式の技術を持っていなかったので、モトローラに高いライセンスフィーを払う必要があるにもかかわらずだ。


 さぞかし苦渋の決断だっただろうが、それほどまでに日本の携帯端末メーカーへの恐怖があったということでもある。


 〓は、基地局というインフラ側の技術を押さえ、技術の進歩のたびに基地局を通信プレイヤーに納めて収益を得たり、メンテナンスフィーを得たりするというスキームだ。最大のポイントは、基地局の技術が進化するたびに、携帯端末の仕様が書き換わることである。


 最初に仕様変化を知る立場にあるノキアとエリクソンは、最初に携帯端末を作ることができる。そして同時にレシピも公開する。すると多数のプレイヤーによる競争がインフラ側のコントロール下で展開される。端末側では、技術改変タイミングが読めず、投資に踏み込みづらくなるので、日本企業はますます参入しづらくなる。



 こうして、日本企業は欧州市場からは締め出され、「ガラケー(ガラパコス携帯)」という不名誉なネーミングをもらう羽目に陥った。素晴らしい技術を誇っていた日本の携帯端末は、ビジネス戦略の前に全くの無力で終わった。


 なお、ノキアやエリクソンは、基地局側の技術を進化させるたびに独自技術の範囲を増やし、多額だったモトローラへのライセンスフィーを着実に削減させていったことは言うまでもない。

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