人気漫才師の奥にある「福因」
落語や漫才をテレビで見ていると、「のんきで、いい商売だな」なんて思えてくる。あんなことで名が売れ、高収入がドカドカと入るなんて、と。
表だけを見て「奥を読む」ことをしなければ、そういう羨望にとりつかれるのは当然かもしれない。
芸能人もテレビの常連ともなれば、プロ野球なら一軍レギュラーのなかのスター級、大相撲なら三役級といってよい。それほどの立場が、しかるべき福因なしに得られたはずはない。
東京の「獅子てんや・瀬戸わんや」という漫才コンビ。芸歴はもう三十五年を超えているはず。私が二十代のとき、東京の寄席で何度も聴いた、それほどの大ベテランである。ある意味では夫婦仲よりもむずかしいといわれる漫才コンビが、これだけの長期間続いたこと自体が偉業というべきで、当然、その「奥」には、尋常ならぬ苦心や努力があったはずなのだ。
エピソードを一つだけ、紹介してみる。
髪がいまだにフサフサ、クログロとしているてんやの方が、早くから髪ばなれ(?)しているわんやより、二つ年長だそうである。てんやは好男子でスマートで、都会風だが、わんやは、いかにも村夫子然としている。