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第3の教育
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教育
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あとがき

『第3の教育』
[著]炭谷俊樹 [発行]PHP研究所


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 毎日のように教育論議が新聞・雑誌・テレビをにぎわせています。実際にスクールを始めてみてあらためてわかったことなのですが、教育については実に多様な考え方があり、統一した意見にまとめるのは容易ではありません。いろいろな意見を聞かざるを得ない公立学校の先生方の苦労が察せられます。

 これだけ価値観が多様化している現在、学校の選択肢を増やし、それぞれの学校が特徴を出して、子どもが選択をするような形に進んで行くべきでしょう。私もラーンネットの考え方が全ての子どもに合うとは思ってはいません。こういう考え方が自分に合うと思われる方に選んでいただく選択肢であればよいのです。

 もともと教育改革をしようなどと思ったわけでなく、自分たちの経験から、自分たちのできることをやり、身近の周りの人にだけでも少しでも役に立てればと思って始めたことであり、本を書くなどとは考えてもいませんでした。しかしながらこんな小さな試みでも何らかのヒントか話題のネタになるのであれば幸いです。また、まだまだ稚拙なことも多いかと思いますが、いろいろ建設的なご批判をいただければと考えています。

 教育論議でひとつ気になることは、あまりにも米国のことばかりが引用される点です。米国の教育、とくに高等教育は優れている点がたくさんあるのは確かです。しかしながら、私は米国の小学校もいろいろ訪問しましたが、彼らの抱えている問題は、日本よりはるかに複雑です。移民国家であり、社会背景も全然違うので、日本の教育問題とは質が違います。したがって、米国のやり方を持ってきてもうまくいかないと思います。

 むしろ私が思ったのは今の日本の状況は約百年前に教育改革が始まったデンマークの状況がより参考になるのではということです。私は住んでいただけで詳しくはわかりませんが、デンマークの教育については清水満さんが詳しく調べられており、彼の著書、『生のための学校』『感じる心、表現する身体』(ともに新評論)に述べられていますのでご参考にしていただければと思います。詩人であり哲学者でもあり、近代デンマークの父とも言われるグルントヴィの試みは圧巻であるといえます。

 ラーンネット・グローバルスクールの活動についてはスタート以来、ずっとホームページ(http://L-net.com)で発信してきました。ここではスクールの詳しい活動状況に加え、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育等の情報の発信や内外の学校の訪問記録等を載せており、またメーリングリストによる意見・情報交換等も行われています。今後はラーンネットのカリキュラムの公開等も行っていく予定ですので、ご興味を持っていただいた方にはアクセスしていただければ幸いです。

 この原稿を書いた後にも、フルスクールではいろいろなドラマが起こっています。中でも私が感動したのは、九月から十月にかけて実施したテーマ学習のひとつ、“ドラマ”でした。この中では初めて英語劇に取り組みました。外国人の子どもたちはできるだけ日本語で、日本人の子どもたちはできるだけ英語を練習できるように、せりふを覚えていきました。

 はじめの二回くらいに練習したときは、みなほとんどせりふを覚えられず、台本のどこどこ?と探しながら、たどたどしく読み上げるような状況で、“こらとてもあかんわ”と思いました。

 ところがそれでも子どもたちはあきらめず、ナビゲータの励ましもあり、どんどん上達していきました。せりふをテープに入れて自宅で日夜練習もしました。一方ドラマで使う大道具や小道具、そして衣装もこだわりを込めて自作しました。低学年の子どもたちは蜂や牛などの動物たちに(ふん)しました。

 結局ドラマのテーマ学習に割り当てられた週二時間では時間が足らず、ベイシックの英語の時間にもせりふを練習したり、大好きなとことんの時間もけずって小道具をつくるなど、まさに総力を挙げて取り組みました。

 そしていよいよ十月中旬には保護者の方も集まった発表会、子どもたちは生き生きと見事に演じきり、われんばかりの拍手喝采を得ました(この奮闘の様子はNHKテレビ“にんげんドキュメント”でも十一月二日に放映されました)。

 この一連の作業を通じ、各クラスの子どもたちの連帯感やチームワークが格段に高まったのです。とくに今までは言葉が良く通じず、すこしよそよそしいところのあった日本人と外国人の子どもたちも、互いに相手の言葉を覚え、共同で困難な作業に取り組み、成し遂げたことによって、今までになかった暖かい連帯感が生まれたのです。せりふに詰まったときには小声で教えてあげる等の助け合いも見られました。一緒に取り組んだ担任のナビゲータにも充実感がありました。

 一方で、子ども同士のケンカも起こります。互いにわがままを通そうとしてしまうこともあります。その場合ナビゲータの仲裁のもとに、なぜケンカしたのか、どう感じたのか、自分に悪いことはなかったのかを話し合わせます。

 子どもたちは自分の感情をぶつけ合います。そうこうする内に、自分の行為がいつのまにか相手を傷つけていたことに気づき、最後にはお互いに謝りあい、もうしないようにしようね、と話します(といってもまたケンカすることもあるのですが)。こうした感情のぶつかり合いを通じてどんどん人間的に成長してくれているように感じます。

 ラーンネットの準備、開設、発展に当たってはいろいろな方のご協力をいただきました。すべてお名前を挙げることができませんが、立ち上げのころからご協力いただいた松田荘平先生、松本アリサ先生、ロゴジャパンの皆様、推薦を快く引き受けていただくなど、なにかとお力になっていただいている大前研一さん、中須賀真一先生、いろいろな方をご紹介いただいて発展のきっかけを作ってくれた松井孝治君や勝見博君、ありがとうございました。また、筆無精の私にこのような光栄な機会をいただいた角川書店の江澤伸子さん、大変感謝しております。

 そして私が誰よりもこの本を贈りたいのは、このようなできたばかりの小さな学校に大事なお子さんを通わせてくれたフルスクールの保護者の方々です。みなさんの勇気により、このスクールは誕生しました。その勇気と期待に応えるべく、今後もスタッフともに尽力して参りますので、是非ご協力よろしくお願いします。
炭谷 俊樹  

  平成十二年十一月



    ラーンネット・グローバルスクールの連絡先


    スクールのホームページ……http://www.L-net.com/
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