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農業で稼ぐ! 経済学
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経済・金融
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まえがき

『農業で稼ぐ! 経済学』
[著]浅川芳裕 [著] 飯田泰之 [発行]PHP研究所


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 本書の執筆動機はきわめてシンプルです。経済学の考え方を使って、「農家の経営」ひいては「日本の農業」の今を正しく分析し、もっと“よくする”ための新たな議論を提起することです。

 経済学とは、僕の理解では、もっている資源をうまく使って人々が豊かになる方法を考え、そのヒントを提示する学問です。

 であれば、“農業”経済学は、農業特有の資源をうまく使って農家が豊かになる方法を提示するのが仕事であるはずです。

 しかし、現実は違います。日本の農業経済学者の大多数が提示する議論は、「日本農業の資源がいかに少ないか」から始まります。そして、「日本の農家はどれだけ豊かでないか(貧しいか)」を分析し、だから「日本農業には未来がない」との申し合わせたような結論に至ります。とくに「小規模だから海外に負ける」との悲観論を前提に、もっと保護を求める論調が大勢を占めます。

 僕には訳がわかりません。日本の面積がアメリカやオーストラリアより狭いことは、小学生でも知っています。それをいまさら「小さいから負ける、豊かになれない、だからもっと金を寄こせ」では、限られた資源の有効活用を扱う経済学者の名に恥じます。日本農業が“悪くなる”ことを吹聴し、それを飯の種にしているといっても過言ではありません。

 一方、農家のほうは経済学的に行動していることを僕は知っています。親から受け継いだ有形無形の資源(農地、土壌養分、設備、降雨量、日射量、積算温度、知的資産……)を熟知し、それをベースに最も効率的な生産活動を行ない、できるだけ大きな価値を生み出すことを日々、めざしています。もっと豊かになるための戦略を描き、そのより確からしい答えを見つけようと、技術的にも経営的にも試行錯誤しています。農閑期には各地の先進農家や新興マーケットを渡り歩き、近未来の事業方針につながるシグナルに感応しようと必死です。

 現場を取材すれば、こうした農家が生き残り、発展を続け、学者のいう日本農業の前提とは無関係に、継承した資源を維持するより少ない価値しか生み出せなかった農家は退出(離農)していっています。これは明白な事実です。

 海外農業を視察した経験のある農家は、自身のノウハウや日本農業のレベルが国際水準にけっして負けないか、それ以上のものだという確信を深めて帰国します。毎年、同伴していますから、僕もまったく同感です。

 ところがいざ日本に戻ってみると、「日本農業は衰退する」「日本の農家は壊滅的だ」とのマスコミの大合唱です。その裏づけを提供しているのが、農業経済学者です。僕の体感的な現実認識と、学問的な情報空間のあいだにあるこのギャップはいったい何なのか?

 PHP研究所の提言誌『Voice』の対談でお会いした気鋭のエコノミスト・飯田泰之先生に聞いてみました。「経済学者の農業談義は“ダメな議論”の典型です」と、一刀両断でした。

 ならばご一緒に、日本農業の未来のために“よい議論”をひとつぶってみましょう、ともちかけたのが本書の始まりです。

 謙虚な書きだしであるはずの“まえがき”なのに、全国各地に3000人いらっしゃる日本の農業経済学者、農業経営学者の諸先輩方を全員、敵に回すような内容になってしまいました。

 それでもいいのです。東日本大震災、原発事故を受けて、日本農業は真の危機にあります。これは、比喩とたとえ話に支えられた従来の農業危機論による空想では済まされない、まごうことなき現実です。最大の資源である農地は塩害にやられ、広範囲で放射性物質が沈着したままです。それでもなお、農業をよくする先導者たる3000人は、もっぱら沈として黙したままです。

 本書は一般向けに著したものですが、3000人の農業経済・経営学者が有する学識と志を信じ、本書より格段上の農業震災復興、そして日本農業の今後の発展に寄与する提言を発せられるよう学者の情念を揺さぶるべく、ここにあえて生意気なまえがきを記します。


 2011年6月
浅川芳裕 
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