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社会人は10年目からが、おもしろい!
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石の上にも三年

『社会人は10年目からが、おもしろい!』
[著]瀬尾里枝 [発行]PHP研究所


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●自分に課した2つのルール

 就職するにあたり、私が自分に課したルールが2つあった。
1.入社して3年間は会社を辞めない
2.辞めるときは調子がいいとき

 会社員の家庭に育たなかった私にとって、いわゆる一般的なサラリーマン生活そのものが未知の世界だったため、会社員に対してかなり偏ったイメージを持っていた。

 会社員とは、毎日のように神田や新橋の駅のガード下でネクタイを緩めて飲んだくれ、部下に説教をして嫌われながらもくだを巻いている上司と、上司の話を煙たそうに受け止めつつも嫌だと言えず我慢して聞く部下。中年サラリーマンの背中には「哀愁」と書いてあり、フラフラになりながら終電に乗る毎日。たまに早く帰っても、家族から歓迎されず週末は粗大ゴミ扱いの寂しい自宅。そして「ああいうふうにはなりたくないなあ」と思いながらも、いつの間にか上司と同じ道を歩んでいく若者。

 会社では、上司に叱られ冗談を言う余裕などない。ましてや新人たるもの、課長や部長に話しかけてはいけない、会社にいる時間はずっとおとなしく静かに、目立たないように座っている。たま〜に楽しいこともあるけれど、サラリーマンというのは概して(つら)いものだ、と思っていた。

 そんなネガティブなイメージが会社員にはあったにもかかわらず、未知の世界への興味とちょっぴり怖いもの見たさから「自分は絶対に民間企業」と決めていた。そして希望通り会社員になり、したくて就職したからにはとりあえず3年間はなにがあっても我慢しよう、と誓った。「石の上にも三年」と言うように、3年勤めてみなければ、会社の()()しも、自分に向いているかどうかもわからないだろうと思ったからだ。もしかしたら難しすぎて仕事についていけないかもしれないし、不愉快極まりないこともあるかもしれない。でも、とりあえず続けるか辞めるかは3年たってから決めよう。これは、就職はしたものの母親から「早く仕事なんて辞めて田舎(いなか)へ戻って来なさい」攻撃にあっており、それに対する反発心もあったからだと思う。

 せっかくこれから社会人として頑張ろう、と思っているのに出端(でばな)をくじかれるようなことを言われたからといって「はい、そうします」とすぐに帰れるかよ、と。

 最初の3年間はあっという間に過ぎた。特に新人時代はわけがわからないうちに終わってしまった。今振り返ると短かったと思える3年間だったが、それなりにいろいろあって、常にぐらぐらしていて些細(ささい)なこと(今思えばなんでもないこと)でへこんだり嫌になったりした。でもそのたびに「3年たったら考える」と自分に言い聞かせていた。

 もし、あなたがたまたま上司や同僚と合わないとしても、会社には人事異動があるのでローテーションを待っていれば遅かれ早かれ、いずれ離れられるのだ。

 3年たたずして嫌になったら、「3年たって辞めるかどうか考える」ことをすすめる。

●「あなたの辞め方は、カッコいい辞め方ですか?」

 そして、もうひとつ、私が20代のころ、何度となく自分に言い聞かせてきたことがある。
「辞めるときは調子のいいとき」

 きっと誰でも、若いうちに一度や二度は「会社を辞めたい」と思ったことがあるはずである。私もご多分に()れず、何度か思った。特に、20代のころはしょっちゅう考えた。

 まずは、自分で期限を決めた3年間が過ぎるころ、不安に陥った。「この3年間、私はなにをしてきたか?」「このままでいいのだろうか?」。

 その後、3年を過ぎた後も、なんとなく先が見えないもやもやした気分から漠然(ばくぜん)と、「ああ……会社を辞めようかなあ。辞めるとなにかが開けるかもしれない……」と思ったこともある。仕事で失敗して上司に叱られたときや、自分の意見が通らなかったときも、「もうダメだ……辞めようか」と思ったり、上司とウマが合わなかったとき、「嫌な人だな、辞めてやるー」と考えたりもした。

 が、正直な話、「辞めたい」と強く思うのは、たいていが人間関係がうまくいっていないときだ。仕事で失敗した場合、それはそれで落ち込むけれど、そのときに上司や同僚に励まされたり助けてもらったりしたら、辞めようとは思わないだろう。反面、仕事は嫌いじゃないけれど、どうしても合わない人が近くにいて人間関係で悩んでいたら辞めるしか解決方法がないような気分になる。

 しかし、ここで私にはほんの少しの意地があった。
「どうせ辞めるなら絶好調のときに惜しまれながら辞めてやる!」だ。

 人とうまくいかないとき、失敗して自分は会社のお荷物になっているんじゃないかと感じるとき、そんなときに辞めたとしても、納得されるだけだ。
「あの人、苦しそうだったもんね、やっぱりね」と。

 そんなの悔しいじゃん! それはささやかな私のプライドだった。

 調子が悪いときなんてそうそういつまでも続くわけがなくて、仕事も人間関係も波があるから、いいときと悪いときの繰り返し。水戸黄門の♪人生楽ありゃ苦もあるさ〜を思い出しさえすればいい。

 で、いいときに辞めてやる! と思っていたら、いつの間にか調子が戻って、調子が良くなると辞めることなどすっかり忘れている。

 そして、また次に落ち込んだとき、「ああ……そういえば前回落ち込んだときは、今度調子が良くなったら辞めてやる、と思ったんだった……よし、次に調子が良くなったときにしよう」と先に延ばす。そうこうしているうちに20代は終わり、いつの間にか前ほど簡単には「辞めてやる!」と思わなくなる。

 そう言いながらも、実は20代の後半に急性胃炎で病院に運ばれ、入院したこともある。

 しかし、そのときにも意地があった。「辞めるときは調子がいいとき。このまま会社に復帰しなければ、きっとみんなに納得されるだけだろう」と病院のベッドで考えた。その、ほんの些細な意地が、苦しいときに私を辞職させなかった。

 もし、今「辞めたい……」と悩んでいるのなら、少し冷静に考えてみてほしい。
「あなたの辞め方は、カッコいい辞め方ですか?」
「今辞めたら、あなたは惜しまれますか?」
「辞めてすぐに前向きに物事を進められますか?」

 そして、もし胸を張って「YES」と答えられなかったら、ちょっと待った! だ。ちょっと待っているうちに調子が戻り、ついこの間まで本気で辞めようと思っていたにもかかわらず、「もうちょっとやってみてもいいかな」と思うかもしれない。そしてそのうちに忙しくなり、いつの間にか本気で悩んだことさえも忘れるかもしれない。

 そして、またいつものペースで働き、次にスランプがやってきて……その繰り返し。そうしているうちに、自分も成長したり変化したりしていつの間にか図太(ずぶと)くなり、昔ほど敏感には悩まなくなっているだろう。

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