『犬たちへの詫び状』
[著]佐藤愛子
[発行]PHP研究所
年の暮にハクライ菓子の詰め合せをお歳暮に貰った。
大きな紙箱にクッキーとキャンデーとチョコレートの三つの缶が詰め合せになっている。その中のキャンデーを食べようと、缶を取り出した娘が、
「ママァ、へんな虫がいるよゥ」
と叫んだ。
キャンデーの缶は透明なビニールで包装されている。缶の上部は包装のビニールと密着しているが、底は四角くくぼんでいて、ビニールとの間に五ミリほどの空間がある。
その四角い空間に、ピョンピョンと飛び跳ねているフケのようなものがいる。形は四角とも細長とも丸とも三角ともいえない。フケのように薄っぺらで、缶の底からピョイと飛んでビニールに吸いつき、パッと飛び下り、また飛んで吸いつく。