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わが経営を語る
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二 熱意と成功

『わが経営を語る』
[著]松下幸之助 [発行]PHP研究所


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順応同化の心がまえを

     (昭和二十五年七月・緊急経営方針発表会)


 お互いが注意しなければならないことは、仕事に熱心のあまり、自我というものにとらわれて、勝手な独断の行動に走りやすいことです。

 仕事の万全を期するには、よく会社の方針、計画、伝統に従い、その中に自己を生かすことが大切です。人一人の知恵は、いかにすぐれていても、ちょうど闇夜の提灯のようなものです。自分一人の考え、判断を最上なりと信じての独断のふるまいは、会社をマイナスに導くものです。ことに上位に立つ人は、この点をよく心得て、常に上司にうかがい周囲にはかり、事を推敲(すいこう)して進めていかなければならないのです。伝統もかえりみず、方針を等閑視して、せまい自分の主観から生まれてくる判断で行動するときは、その努力、才能がすぐれていればいるほど、かえって会社を苦しめることとなるのです。

 私自身についていいますと、終戦までは、たしかに独自の考えで仕事をしてきた面もあるように見受けられます。松下個人の判断が会社の方針となって経営が進められてきた面もあるわけです。しかし私としては、決して自己の考えにとらわれていなかったと申し上げてはばかりません。やはり常に社会の歩み、日本の方針、伝統を考え、これに順応するとともに、従業員の声に耳をかしつつ決定して、松下電器独特の方針としたのです。

 したがって、決定する私を見て“独断”のごとく思われてきたかもしれませんが、決定するまでの心組みには、常に順応の構えがあったのです。決して私個人で判断しません。一人ですることは、かえって不安をきざし動揺するのです。常に社会の(すう)勢に意を払い、国の伝統と社会正義の通念にもとづいて、そこに自己を生かそうと心がけていたのです。その心がまえがあらわれて、松下電器の遵奉すべき七精神の一つである“順応同化”の精神となったのです。

 みなさんも、松下電器を通じて社会に結ばれているのですから、この気持ちをしっかりともっていただきたいのです。会社経営のみに限らず、生活をしていく限り、この心がけは大切です。ものの一面にとらわれてそれを主張していると、その背後に流れる大きな力を見忘れてしまうものです。そこから思わぬ失敗があらわれてきます。常に自己の背後にある流れ、関係、つながりを見通す目、心を培い、この中に自分を生かすよう訓練していかなければなりません。

 上司の信頼が厚ければ厚いほど、それに応える意味において、事を処するにあたり、自己の判断を上司にうかがいただす心がけが必要なのです。うぬぼれてはなりません。そこに謙虚さ、(おのれ)をつつしむ修養が大切なのです。私としては、お互いに会社の経営にタッチする限り、忌憚なく批判していきたいと考えています。そして順応同化の気持ち、謙虚な態度を培っていきたいと期しています。

 松下電器が今日まで、社会に順応同化して喜びを味わってきたと同じように、会社の中において、各人めいめいの考えを、その計画、伝統のうちにのびのびと生かしていただきたいのです。

真剣味あふれる職場

     (昭和二十五年七月・緊急経営方針発表会)


 次にみなさんにご理解ねがっておきたいことは、私はご承知の通り、もともと商売が好きで、全身全霊商売に打ち込んで疲れを知らない人間です。ところが、終戦このかた、好きな商売ではありますが、いや気がさしていたのです。というのは、まじめに再建のことを考え、働こうとするといろいろの制約を受け、また善意が素直に受け入れられない、といった社会情勢に対する不満で、つい働く喜びを失いかけていたのです。しかし、いま、心機一転、本来の姿にもどることになりました。好きな道に打ち込む喜びにみちみちています。この熱情からほとばしる生気は、力強いものがあると思います。

 そのあまり、ときにはみなさんの処置、行動について、厳しく批判することもあるかもしれません。それは使命を思う故です。またその人を愛する故です。実際はそこまで気魄がこもっていないと、神ならぬ人間では、真剣に仕事ができないのではないかと思います。その間に人間として鍛えられ、仕事の真髄もわかってくるのです。偉人伝記や出世物語の主人公はみなそういう人生をおくっています。激烈な態度、真剣さが、姿、形にあらわれないと、何事も立派になしとげることはできません。したがってそこに繁栄もなく、豊かな生活も生まれてこないのです。

 八方美人的で仕事ができるのは神に近い人のみです。われわれふつうの凡人では、望めないところです。熱意がこもると、言葉の節々に激烈さが加わるかもしれません。しかしそれは真剣なもののあらわれである、と、よく理解していただきたいのです。

 松下電器の過去の発展史上にも、乱暴とまで思われるような叱り方もあったように記憶しています。そういう場合でもみなよく理解し、そこに陶冶され、若い人たちも奮起し、立ちあがりました。そしてそれが努力の一端となって外部への働きかけとなり、成果をあげ、またその人自身も自分で不思議なくらい力がついてきて、実力が培われていったのです。その人自身の進歩が見出されてきたのです。それと同時に会社の進展となってあらわれ、全体として働きが高まっていったのです。

 このことを思い、今日の場合を考えて、お互いに心のゆるみに張りを加え、打てば響く雰囲気を盛りあげていきたいのです。仕事に打ち込んだ真剣味あふれる職場にしていきたいのです。

価値判断の能力を

     (昭和三十二年一月・経営方針発表会)


 会社を発展させ、社会の公器としてさらに光彩を放つためには、社員の訓育といいますか、人間的な成長に、会社がもっともっと努力すべきでありまして、そういう考えをもっている会社に入ってこそ、青年社員の将来というものが、非常に輝くのではないかと思うのです。

 そう考えてみますと、ここ数年来、多少そういうことに遠ざかっておったように思います。
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