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天皇と太平洋戦争 開戦の真相から終戦の決意まで
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歴史
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第十四章 実質上の日米最終戦・サイパン

『天皇と太平洋戦争 開戦の真相から終戦の決意まで』
[著]土門周平 [発行]PHP研究所


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 日本で研究されたアメリカの中部太平洋攻撃問題に関するものの中に、一九四三年(昭和十八)五月十二日から二週間、ワシントンで開催された米英首脳と米英連合参謀長委員会の戦略会議(コード名・トライデント)資料がある。その中で「日本を敗北させる戦略計画」という表題の資料は大変興味ある内容を含んでいる。


 日本の無条件降伏は、日本本土に対する連続航空攻撃、同周辺海域の支配および上陸進攻によって達成するとしている。そしてその場合、攻勢の策源を中国沿岸部(主港湾は香港)に置き、英軍はマラッカ海峡、南シナ海経由で、米軍はセレベス海、スル海、南シナ海を経て到達するというのである。


 この計画案をみるかぎり、当時の米軍首脳部の対日打倒に関する基本的な考え方は、ヒットラーに対するものとよく似ている。北海やバルト海から直接ドイツ本土に上陸進攻するものではなく、攻勢の本拠を一方は英本土、他方は香港付近の中国沿岸部に置き、どちらも敵の本土に対する戦略爆撃や封鎖によって戦争遂行能力の減殺を図った後に上陸進攻する、といった様式なのである。


 こうみると、アメリカ側はドイツ打倒について英国が強く主張して止まない地中海作戦に強く反対したことは有名であるが、アメリカ自体もこの時期には、対日戦争における“迂回作戦”を提唱していたことになる。


 さて、アメリカ艦隊司令長官兼海軍作戦部長キングが、連合参謀長委員会で、その作戦の考え方を説明している。


一、フィリピン領有以来三十数年間、米海軍は、その支援または奪回に関し多くの研究を行なってきたが、太平洋における対日戦争でもっとも重要な点は、日本艦隊との決戦およびマリアナ諸島の奪取にある。

二、対日作戦は、すべて敵交通線の遮断とフィリピンの再占領を目標として行ない、それぞれの作戦は、第一に日本の交通線を一層脅かしまたは遮断するか、第二は対日全面攻勢に備えるための諸拠点の獲得に寄与するか、の二点をもってその適否を判定しなければならない。

三、フィリピンへの中間目標は、まずラバウルとトラック、次にマリアナである。日本の交通網に占める位置の故に、マリアナこそあらゆる情勢を左右する鍵である。



 キングがこれほど重要性を強調したマリアナについて、日本の方は、どのように考え作戦準備をしていたのであろうか。


 日本側も、マーシャル諸島に足場を作ったアメリカ軍が、次にマリアナをねらうことは予測していた。マリアナ諸島は南洋委任統治領の中でもっとも日本に近く、アメリカ側は日本本土を容易に空襲することができる機動部隊の基地とするために、早期にマリアナの制圧、占領という行動をとることがある、と予想することはできた。


 ただ、米軍の主攻勢線は、ニューギニアかフィリピンに向うものと判断したことと、マリアナの防備は堅固であるので、米軍はそう簡単には攻撃してこないだろう、という期待が強かった。


 五月二日、当面の作戦指導方針についての御前研究が行なわれた。御前研究というのは国家の最高意思を決定する御前会議とちがって、陸海軍統帥部の思想を調整し、天皇に対するご報告をかね、かつそれに権威をもたせるための行事である。


 このとき嶋田軍令部総長は次のようにいっている。

マリアナ、小笠原の攻略には、米軍は相当の犠牲を覚悟する必要があるばかりでなく、その後の確保は容易ではないので、敵はわが基地航空兵力を減殺し、之が弱化を図ったあと、進攻を企図する公算が大きいと存じます」


 この発言は、前述のように昭和天皇の御前でのものであることに注目する必要がある。嶋田がウソをいうはずはない。そう信じていたのである。


 陸軍側は、(うしろ)()参謀次長がこういう。

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