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本物の医師になれる人、なれない人
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人文・科学
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序 章 医師という職業

『本物の医師になれる人、なれない人』
[著]小林公夫 [発行]PHP研究所


読了目安時間:13分
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 1 飛行機を引き返させるか否か


 医師という職業に要求される能力の高さとその難しさを物語る、こんなエピソードがあります。

 一人のベテラン医師が、ドイツから成田へ向かう飛行機に乗り合わせた時のことです。

 突然、「お客様の中に、お医者様はいらっしゃいませんか」という機内アナウンスが流れました。どうやら急病人が出たようです。

 これを聞いた医師は、いくばくか思い悩んだあげく、乗務員に助力を申し出ました。

 診察してみると、患者はさほど深刻な状況ではなく、虫垂炎(ちゆうすいえん)(盲腸)の初期症状と思われました。命に別状はないようです。とはいえ、機内では詳しい検査もできませんから、油断は禁物でした。大事をとり、医師は隣の席に陣取って病人の様子を静観することにしました。

 その時、キャビンアテンダントが近づいてきて、心配そうな表情で医師にこう尋ねました。
「先生、当機はこれからシベリア方面へ向かいます。まもなく出発地には引き返せない状況になるのですが……」。つまり、患者のために今、引き返す決断をすべきか、それともこのまま飛行を継続しても大丈夫か、というのです。

 こう聞かれて、医師はとまどいました。

 この医師は経験を積んだベテランです。航空機内で設備や器具に限りがあるという難しい状況ではあるものの、患者の命を預かること自体はよくあることで、どうということはありません。

 しかし、今回は少し事情が違いました。ここでは「引き返すか、それとも飛行を継続するか」の判断が医師には委ねられているからです。平たくいうとこの便に乗り合わせたすべての乗客と航空会社の予定が、医師の決断次第で大きく混乱することになるからです。

 いったん飛び立った国際線旅客機が、緊急に引き返すことになれば、さまざまな損害が発生することが想定されます。国際線の中にはこれから数億円規模の商談に臨む商社マンが搭乗しているかもしれません。到着が遅延すれば、多大な経済的損失が生じ得ます。あるいは、一人娘の結婚式に間に合うよう、帰国を急ぐ父親が乗り合わせているかもしれません。こうした場面での遅延は、それぞれの個人にとり取り返しがつかない問題です。

 航空会社のほうも、燃料費がかさむ他、代替便や乗組員の勤務シフトなどを調整したり、客のクレームを処理するなど、面倒な対応を迫られることになります。
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