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三笠宮と東條英機暗殺計画 極秘証言から昭和史の謎に迫る
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歴史
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第五章 戦後民主主義と三笠宮

『三笠宮と東條英機暗殺計画 極秘証言から昭和史の謎に迫る』
[著]加藤康男 [発行]PHP研究所


読了目安時間:22分
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昭和二十二年四月──三笠宮の英語教師


 無条件降伏を体験した三笠宮の戦後生活は、いくつかの悩みを抱えてスタートした。


 悩みはやがて生きる上での疑問に膨らんでいった。


 一つは自分自身の判断で皇族として残るかどうか、二番目は無為徒食というわけにはいかないので、今後何をすればいいのか。


 三番目は中国各地で見聞きした日本軍の「残虐行為」に対する自責の念で、宮はこれを「一軍人としての自省」と表現し悩んだ。


 そして遂には紀元節復活に反対し、万世一系を非科学的と評するようになる。


 紀元節反対論は再三にわたって三笠宮によって論じられているが、総じて以下のような論拠によるものが主要論点と思われるので、代表的な論文の一例を紹介しておきたい。


「昭和十五年に紀元二千六百年の盛大な祝典を行った日本は、翌年には無謀な太平洋戦争に突入した。すなわち、架空な歴史──それは華やかではあるが──を信じた人たちは、また勝算なき戦争──大義名分はりっぱではあるが──を始めた人たちでもあったのである。もちろん私自身も旧軍人の一人としてこれらのことには大いに責任がある。だからこそ、再び国民をあのような一大惨禍に陥れないように努めることこそ、生き残った旧軍人としての私の、そしてまたいまは学者としての責務だと考えている」(『文藝春秋』昭和三十四年一月号)



 つまり、三笠宮が進んだ「歴史学」の方向とは、非科学的な神話の世界を否定し、その象徴でもある紀元節を祝うような精神があの戦争を引き起こした、とするような教えだった。


 国民が食うや食わずの食糧難にあえいでいる時代、自分も何かの役に立ちたいと考え、東大に学びたいとされた殿下の気持ちは率直なものだったろう。


 ところが間もなくして三笠宮が刊行したオリエント文明に関する『帝王と墓と民衆』(昭和三十一年)という一書は、皇族としての自らの立場への疑問を世間に提示することになる。同書の巻末に掲載されている「わが思い出の記」という先の戦争と皇室制度への鋭い批判に溢れた一文は、少なからず波紋を呼んだ。やや不器用で、一途な学究肌のところは兄宮昭和天皇とも共通した性格で、篤実謹厳性ゆえの発言ともとられた。


 戦災で宮邸が焼失したため、三笠宮一家は品川区の比較的小さな屋敷に仮住まいをしており、目黒駅から電車とバスを乗り継いで本郷の東大まで通った。


 ときにはダットサンを自分で運転して行ったというが、それは陸軍機甲本部での勤務が大いに役立ったのではないか。三笠宮家の三男、故高円宮殿下が残したエッセイにこの家の思い出が綴られている。


「御用地の防空壕で生活していた両親は二十年暮れから葉山にある知人の別荘(三井家葉山別荘)を拝借して住み、二十二年に目黒に家が見つかったので買って移り住みました。目黒駅と恵比寿駅の中間、ビール工場から谷ひとつ隔てた高台、品川区長者丸──現在は上大崎二丁目となっておりますが──ここにあった和洋館で戦後の三笠宮家は始まりました。本当は品川区なのですが、目黒駅が近かったのでわれわれは目黒の家といまでも呼んでいます」(『オーロラが消えぬ間に』)



 目黒の家は昭和の初めごろ建てられたもので、二十年も経っていたというが、三笠宮はこれを借金して買ったと述べている。

「宮家の中では最も財産もなく、貧しかった」と三笠宮は言うものの、三笠宮自身の生活は国からの歳費でまかなわれていた。それを思えば宮の性格からして何かしないではいられなかったので、まずは学問から、という意識もあったろう。


 それが昭和二十二(一九四七)年四月から二十五年三月までの東京大学文学部研究生という生活によってかなえられた。その後は、東京女子大や青山学院でも講師として教壇に立っている。


 東大ではヘブライ史から古代オリエント史へと関心が進む一方、これまで士官学校や陸大でも英語を専攻していたものの、戦後社会で活動するにはさらに基礎からやり直したいと思い直すようになった。

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