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『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕
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エンタメ
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第一章 『週刊文春』と『週刊新潮』のつくり方

『『週刊文春』と『週刊新潮』 闘うメディアの全内幕』
[著]花田紀凱 [著] 門田隆将 [発行]PHP研究所


読了目安時間:1時間7分
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──そのウラ側を徹底暴露


「この、ハゲーっ!」で一五〇〇万円



 門田 近年、『週刊文春』が衝撃的なスクープを連発して、数あるメディアの中でも(きわ)()った存在感を示しています。そのスクープは破壊力・影響力の大きさから「文春砲」の異名を取るまでになりました。しかし、一方で週刊誌や雑誌全般で見た場合には、部数を大きく減らしている雑誌も多く、出版界の苦境が続いています。


 本書では、『週刊文春』の名物編集長として同誌を総合週刊誌ナンバーワンの座に押し上げた花田紀凱さんと、新潮社に入社以来、『週刊新潮』に二十五年間在籍して、さまざまな記事を執筆してきた私とで、『週刊文春』『週刊新潮』の内幕とその意義、さらにメディア全般の問題について議論していきたいと思います。


 さて、「文春砲」が立て続けに炸裂した二〇一六年以降、『週刊文春』の注目度は他のメディアを圧倒し、『週刊文春』が何を報じるのかが、毎週毎週、テレビのワイドショーの重大な関心事になるほどでした。


 そこで『週刊文春』では、雑誌の記事をテレビが使うときは、表紙も映すとかクレジットを入れるとか、記事の使用一回につきいくら支払うとかいったことをシステム化しました。こういうシステムは、今の新谷学編集長が確立したと聞いています。


 花田 そう、新谷君が確立したそうです。今や、けっこうな収入源になっているようですよ。


 門田 そもそも、週刊誌のスクープがテレビのワイドショーを巻き込んで社会的事件となり、各局の報道合戦が過熱するという現象は、一九八四年の『週刊文春』のスクープ「疑惑の銃弾」に始まったと言っていいと思います。「三浦事件」「ロス疑惑」などとも呼ばれるこの事件のスクープについては、第四章であらためて取り上げますが、このときワイドショーは雑誌の記事を無断で使いまくっていました。そして、それからあとも、週刊誌のスクープは、テレビに勝手に使われてきました。花田さんもメチャクチャ怒っていましたよね。


 花田 あのあとも、ずっとタダでパクられていました。まあ、タダでも雑誌の宣伝にはなるから、「せめて『週刊文春』のスクープであることをちゃんと表示しろ」ということはテレビ局に要求していましたけれども。


 門田 テレビが週刊誌を発売前日に入手して、勝手にパクっていたわけです。それも『週刊文春』や『週刊新潮』のネタだと言わないまま、タダで使っていた時期が続いていました。それではあまりにひどいから、せめて雑誌の表紙を映せと出版社側は要求していたわけです。


 それが二〇一六年、文春砲の威力もあって、ようやく記事の使用料をテレビ局が支払うシステムが構築された。実に三十年がかりのシステム構築だったわけです。


 新潮社も追っかけで、同様のシステムを構築しています。実は後出しジャンケンで新潮がシステムを作ったので、記事の使用料は文春より高めに設定したとか、しないとか(笑)。


 花田 えっ、そうなの?


 門田 だから、『週刊新潮』(二〇一七年六月二十九日号)のスクープ「『豊田真由子』その女代議士、凶暴につき」では、ずいぶん儲けたようです。しかも『週刊新潮』は決定的な音声データも握っていました。


 テレビ局は、「この、ハゲーっ!」とか「ちーがーうーだーろー!」などといった豊田真由子代議士(当時)の音声を流すのに、『週刊新潮』に一番組ごとにウン万円の使用料を払う。すると、各局が毎日毎日、朝も昼も夕方も、いろいろな番組でこれを流していましたから、音声を放送した番組の数の分だけウン万円がどんどん『週刊新潮』に入ってくるわけです。インターネットでは、「新潮は、このネタだけで一五〇〇万円稼いだ」と話題になりましたね。


 花田 それは、雑誌の経営を考えたら、ずいぶん大きな金額ですよね。広告収入は別として、純粋に雑誌の売り上げ利益だけで一〇〇〇万円以上稼ごうと思ったら、五万部以上、余計に売らなければいけないことになります。


 門田 私も、よもや『週刊新潮』が音声で儲ける時代が来るとは思いませんでした。これには驚きました。


テレビ局が週刊誌スクープに群がる理由



 花田 最近はビデオカメラも進歩していますから、高画質の動画撮影が簡単にできるようになりました。動画から「写真」をピックアップしても、十分、雑誌のグラビアで掲載するに足る画質になるので、動画を撮っておけば、取材対象の状況や表情を含め、まさに決定的な瞬間を写真として切り出して掲載することができるのです。ある意味では、シャッターチャンスという概念がなくなってしまったとも言える。だから、週刊誌も動画で取材するようになっています。張り込んだ現場や、本人に直撃取材をする現場などで動画を撮影するわけです。その動画をテレビに売れば、これはこれでまたお金になります。雑誌のスクープがますますテレビ向きになっていますよね。


 門田 テレビ局も、広告収入が減って経営が厳しくなり、番組の制作費も抑えられている。とすれば、自前で取材班を出すよりも、週刊誌が撮ってくれた映像なり音声なりを買ってしまったほうが安くついてありがたい。しかも、『週刊文春』にせよ『週刊新潮』にせよ、スクープなりスキャンダルに関しては百戦錬磨ですからね。テレビ局からすれば、安く、楽に、高クオリティのネタが手に入る。


 花田 だけど、相手には「『週刊文春』です」と言って取材して、そのとき動画を撮るわけですよね。それをテレビに流していいのかなあ?


 門田 よくないでしょうねえ(笑)。「『週刊文春』の発行部数はたかだか四〇万部だからと思って取材に応じたのに、テレビに流れて、全国民に知られたじゃないか」ということになるわけですから。取材された側としては、たまったもんじゃないでしょうね。


 花田 そうなりますよね。それ、ちょっと変ですよね。とはいえ、これだけ「文春砲」だなどと騒がれていますから、取材される側も覚悟しているかもしれませんけれどね。


 テレビ局の人から聞いたのですが、最近では、情報番組の内容を決めるのは、結局、放送作家だそうです。彼らの基準というのは、視聴率しかない。視聴率が上がるなら、右でも左でもいい。安倍晋三首相を叩けば視聴率が上がるとなれば、何度も繰り返して安倍叩きの方向に行く。二〇一七年の春には、テレビでは「大阪で幼稚園を運営している森友学園が新たに小学校を設立しようとするにあたり、安倍首相が裏で便宜を図るべく関与していたのではないか」というバカげた報道が繰り返されましたが、それも森友学園の理事長であった籠池泰典氏のキャラクターが大きかった。テレビ映えすると言うと怒られてしまいますが、面白い映像が撮れて視聴率も上がるから、どんどん突っ込んでいった。そういう基準で、放送作家が番組の方向を決めていると言っていましたね。


 門田 それでワイドショーの企画会議はと言うと、週刊誌をずらりと並べて、「今週はこれで行きましょう」と指をさして決めるわけです。完全に他人の(ふんどし)で相撲を取っています。まあ、昔からそうですけどね。


 花田 『週刊文春』は最近、芸能ネタが多すぎるんじゃないかと、編集長の新谷君に言ったことがあります。すると、芸能ネタはワイドショーが全部飛びつくから、けっこう潤うんだと言っていました。


 週刊誌のスクープが芸能ネタばかりでいいとは思わないけど、それで潤うとなれば、狙いたくなる気持ちもわからないではない。しかし、スキャンダルがお金になるからと、そればかりを追いかけて雑誌の方向性が歪んでしまうのだとしたら、あんまり褒められた話ではありませんね。


「『文春砲』汚れた銃弾」──狙いはスクープ潰し?



 門田 『週刊新潮』出身の私としては、『週刊文春』の不正を告発した『週刊新潮』(二〇一七年五月二十五日号)の特集「『文春砲』汚れた銃弾」について、やはり花田さんの見解をうかがわないわけにはいきません。読者の方々の中にも、「『週刊文春』がそんなことをやっていたのか」と驚いた人は多かったと思います。

「スクープ至上主義の陰で『産業スパイ』! 新潮ポスターを絶え間なくカンニング!」というサブタイトルがつけられたこの告発記事によると、二日後に発売される『週刊新潮』の中吊り広告(電車内に吊るす広告)を文藝春秋の社員が出版取次会社から持ち出して、コピーしていたというのです。


 基本的に毎週木曜日発売の『週刊新潮』は、二日前の火曜日が校了日で、記事の修正ができる最終のデッドラインは午後十時から十一時頃ですが、中吊り広告は火曜日の午前中には刷り上がって各方面に配布されます。『週刊文春』も同じ木曜日発売ですから、こうしたタイムスケジュールに大きな違いはありません。


 校了日のデッドライン数時間前に『週刊新潮』の中吊り広告を不正に入手した『週刊文春』は、それをもとに追っかけ取材で記事を書き換えたり、中吊り広告の「右トップ」(一番の目玉記事の見出し。広告の右側に大書される。二番目の目玉記事の見出しは左端で大書され「左トップ」と呼ばれる)と同様の記事を文春発の「スクープ速報」としてネットにアップして、『週刊新潮』の「スクープ潰し」をしたりしていると告発したのです。


 そして二〇一七年九月五日、文藝春秋の松井清人社長が新潮社を訪れ、謝罪文書を手渡しました。文書の中で松井社長は、長期にわたって『週刊新潮』の中吊り広告を借り受けていたことも、新潮のスクープを文春のWEBサイト上で先に流した事例があったことも認め、謝罪しています。


 花田さんもこの一件を知ったときは驚いたのではないですか。


 花田 いや、文藝春秋という会社には、たくらんで悪いことをするような人間はあまりいないんですよ。昔からよく言っていたのですが、『週刊新潮』がプロ集団だとすれば、『週刊文春』はアマ集団で、はっきり言って取材力、文章力では(かな)わなかった。だからといって『週刊新潮』のネタを盗んでまでなんとかしてやろうと思っていたわけではないと、ぼくは思います。


 告発記事によると、『週刊新潮』の中吊りを文春に渡していた取次会社の社員は担当になったばかりで、「文春とのことは前の担当者から引き継いだ」と言っており、前の担当者も五年前にやはり「前任者から引き継いだと思う」と言っているそうです。その最初のきっかけが何だったのかは、わかりません。わかりませんが、ライバル誌がどんなことをやっているのか、事前に知ることができるのであれば、それは知りたいだろうし、新潮がこんなタイトルをつけているなら、うちはもうちょっと強いタイトルにしようとか、それぐらいのことはあったかもしれない。


 だけど、中吊りを入手してから校了までに四、五時間しかないわけだし、そこからできることなど、たかが知れています。“カンニング”して新潮のスクープをどうこうしようということは、あまりないと思う。ただ、今はネットがあるから、ネットに先に流してしまったことはあったらしい。


 門田 潰しですよね。相手のスクープ潰し。


 花田 意図的にそんなことはしてないと信じてます。意図的に何か盗んでやろうという意識ではやっていないと思う。『週刊新潮』の中吊りを文春に渡すことは、取次会社の担当者の間で引き継ぎ事項になるぐらい、何年にもわたって常態化していたわけですから、とくに今の新谷編集長やその前の編集長にとっては、中吊りが届くのが習慣になっていたと思います。で、届けば、そりゃ見ますよね。見れば、多少、細工しようということはあったかもしれない。だけど、そんなに悪気はなかっただろうと、ぼくは思っています。


 門田 現実を言うと、『週刊文春』の“カンニング”はもう日常化していたわけです。ですから、たとえば文春のデスクが「おい、今度の新潮はどうなっているんだ?」と周囲に聞くといったことなど、編集部内ではごく普通の風景になっていた。


 そればかりか、『週刊文春』が『週刊新潮』の広告を入手していろいろやっているというのは、外部の情報通の間でもけっこう知られていたらしい。政府機関の中には、「今週の『週刊新潮』、どうなっているの? 〇〇関係の記事、出てない?」といったことを、新潮ではなくて、文春に訊くところさえあったと言われます(笑)。

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