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歴史
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第六章 国家に尽くす人物を育成するために

『山本覚馬』
[著]安藤優一郎 [発行]PHP研究所


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キリスト教入信と新島襄との出会い


 明治十八年(一八八五)五月十七日、山本覚馬は妻の時恵とともに洗礼を受ける。覚馬が満五十七歳の時だったが、最初にキリスト教に触れたのは京都府大参事槇村正直の知恵袋として活躍していた同五年(一八七二)のことである。

 江戸の頃、キリスト教は厳禁されていたが、西洋文明に造詣の深い覚馬は、キリスト教について別に嫌悪感は持っていなかった。そして、明治六年(一八七三)に禁教の方針が撤回されると、外国人宣教師による日本での布教活動も可能となる。

 明治四年以降、京都では産業振興を目的として毎年のように博覧会が開催されたが、会期中(三ヶ月間)は外国人にも入京を許す。当時は、外国人が京都に自由に入ることはできなかったのだ。

 よって、大阪や神戸の居留地にいた宣教師はその機会を捉え、次々と入京を果たす。そして博覧会を見学したが、その折に覚馬とも接触する。西洋文明への理解が深い人物として、宣教師の間でも知られていたのだろう。会津藩士時代は長崎に遊学して外国人から西洋に関する知識を得た覚馬は、こうした機会を通じて、さらなる知識を習得していく。

 明治五年に開催された第二回目の博覧会の際には、宣教師のギューリックやデイヴィスたちと面会している。その折、現在、キリスト教は厳禁されているため市内での公開説教は認められないが、自宅での説教は可能。岩倉具視を全権とする条約改正交渉のための使節団が帰国すれば宣教師の京都在住も可能、つまりはキリスト教の布教が日本でも解禁になると予告したという。

 実際のところは、帰国前の六年二月二十四日に禁教の方針は撤回される。明治政府は世界情勢を鑑み、キリスト教禁止をうたった高札の撤去を指令したが、ここでも覚馬の先見の明が確認できる。

 明治八年(一八七五)四月に宣教師ゴードンから贈られた『天道遡源』は、覚馬がキリスト教の教えに感銘を受ける契機となった。『天道遡源』とは、漢文で書かれたキリスト教の入門書である。

 そんな覚馬のもとに、アメリカ帰りの青年がやって来る。その名を新島襄。同志社大学の創立者となる人物だが、奇しくも『天道遡源』を贈られた直後の四月上旬に、覚馬は新島と対面する。


 覚馬よりも十五歳年下にあたる新島は、天保十四年(一八四三)一月十四日に上野(こうずけ)安中(あんなか)藩士新島民治(たみはる)の長男として江戸で生まれた。元治元年(一八六四)にアメリカに密航したが、海外滞在中に幕府が倒れて明治政府が誕生する。その後、公使相当の外交官である弁務使として着任した森有礼(もりありのり)の奔走で、政府から留学生として改めて公認され、密航の罪は消滅する。

 新島が米国伝道会社に所属する宣教師の一人として帰国したのは、明治七年(一八七四)十一月二十六日のことである。最大の任務は日本における伝道活動だったが、それだけではない。キリスト教と近代科学を教える学校の創立も目指していた。

 当初は大阪で学校の創立を目指したが、大阪府知事の渡辺昇(わたなべのぼる)は学校創立を認可する条件として、キリスト教主義に拠らないこと、宣教師を教員に採用しないことを提示してきた。そのため、計画は暗礁に乗り上げてしまう。

 しかし、京都府大参事の槇村と面談する機会を得たことで事態は急転する。槇村は渡辺と仲が悪く、その対抗心から大阪で挫折した新島の計画を京都で実現させようと考えたらしい。その直後、槇村からの紹介という形で覚馬との対面の日を迎える。

会津を救えなかった無念と同志社設立への思い


 覚馬は初対面の新島に向かって、キリスト教に対する思いを次のように語った。自分はキリスト教に対して長らく疑問を持っていた部分があるが、『天道遡源』を読んで、その疑問が解けたという。

曾て私の胸中に満ちて居つた多くの疑は一度この書を読んで氷解しました。常に国家に尽したいと希ひ、中頃法律でその希望を達しやうとしたが、遂に成す所がなかつた、今この書をよみ、人心の改善は只宗教に依るべきを悟つた私が久しく暗々裡に求めたものは即ちこの宗教の説く所のものに外ならなんだ
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