読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1194651
0
気になるスピリチュアルカウンセラー 全部かかってみました!
2
0
1
0
0
0
0
ルポ・エッセイ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
1 ボロボロのジーパンで現れた貧乏カウンセラー

『気になるスピリチュアルカウンセラー 全部かかってみました!』
[著]さくら真理子 [発行]すばる舎


読了目安時間:6分
この記事が役に立った
1
| |
文字サイズ


 A氏と会ったのは赤坂のカフェ。雨がそぼ降る日曜日だった。

 約束の時間に5分遅れてやってきたA氏は、ボロボロのジーパンにTシャツ姿で、男性なのに髪にはプードルみたいなパーマをかけていた。そして、鞄の中からガサガサとスーパーのビニール袋を取り出すと、雨に濡れた折りたたみ傘をしまった。

 それを見て、「貧乏臭い人だな」と思い、ふとA氏の足元を見てみると、スニーカーには小さな穴が空いていた。新品を買う余裕がないのだろうか。そういえば何だか体が臭う気もする……。


 A氏は、あるスピリチュアル系のイベントで知り合いになったオラクルカードの占い師だ。オラクルカードとは、簡単に言えばタロットカードのルールをもっと簡単にしたもの。

 タロットカードでは、大アルカナ・小アルカナのカードが全部で78枚あり、その絵柄のモチーフは、ソード(剣)、ワンド(棒)、ペンタクル(貨幣)、カップ(杯)と決まっているが、オラクルカードは、枚数は大体3550枚程度と少なく、カードの絵を見るだけで素人にも意味がわかるようになっている。天使やイルカなど、絵のモチーフが色々とあって楽しい。

 余談になるが、オラクルカードは、出版社にコネさえあれば、素人でも簡単に作れる。だから、いい加減な作者が作った質の悪いカードも出回っているので、買う際には注意した方がいい。

 私は、ハワイをモチーフにしたオラクルカードの作者に会ったことがあるが、その作者は、「ハワイになんて行ったこともありませんよ。なんとなく売れそうだからハワイをモチーフにしました。ハイビスカスの花やイルカを描けば、それっぽくなりますしね。お金? 思ったより稼げました。それで初めてハワイ旅行に行こうと思います」などと語っていた。

 だが、それを聞いて、「うらやましい」と思ってしまった私こそ、性根が腐っている。


 話を元に戻そう。

 A氏は年齢を明かしていないが、見た目からするとおそらく40代後半。あるイベントに参加した時、A氏がカードと霊視を組み合わせて鑑定しているのを見て、「本当に当たるのだろうか」とがぜん興味が湧いた。そこで、個人的に連絡を取って、1時間5000円の鑑定をお願いしたというわけだ。

 ちなみに、「1時間5000円」という料金相場はスピリチュアル業界ではリーズナブルな方だ。通常は15分3000円ほどで、海外の有名人になると、1時間8万円という鑑定も当たり前にある。

 鑑定してもらってみてわかったのは、A氏はカードを使わなくてもほとんどを霊視で読み取ることができるが、クライアントに未来をイメージしてもらうためにカードの絵を利用しているということだ。本来はカードを使わない霊視が得意で、その中でも相手の気持ちを読み取る「透視リーディング」の使い手であった。

 たとえば、私がかつて恋した男性について話していると、「君はその人にドキドキするというよりは、家族みたいに安心して話せるから、彼を好きになったんだよね」という具合に、他の誰にも話したことのないような心の動きを絶妙に言い当ててみせた。

 さらに、A氏は見た目の割には気前がよかった。その日は1時間の鑑定をする約束だったが、A氏は時間外で1時間も延長してくれて、千葉県の房総半島からはるばる来てもらったのに「交通費はタダでいいよ」と、料金をまけてくれた。

 私はそれを聞いて、内心で「ラッキー!」と喜んだが、A氏のボロボロに破けたジーパンや穴の開いたスニーカーを見ていると、「サービスしなくていいからジーパンを買え」「風呂にも入れ」という気持ちが湧いてきてしまった。

 というわけで、A氏の鑑定には満足したが、彼は最後にポロリと気になる一言を残した。
「僕は霊能力が並外れて高いけど、子どもの頃からお金にだけは恵まれないんだ」

 私は、「本物の霊能力者が貧乏なんてことが有り得るのだろうか」とふと疑問に思った。


 私の悪い予感は的中した。

 それから数年後、私はこの時のA氏の鑑定が的外れだったことに気づくのだ!

 たとえば、私が2時間もクドクドと続けた相談の中には、「好きな人と喧嘩をしてしまい、相手にLINEをブロックされ絶縁したが、彼にもう一度会えるか」という未練がましい内容があったが、貧乏カウンセラーのA氏は、「君に恋のキューピッドの男性が現れて、彼ともう一度引き合わせてくれるよ!」と、自信満々に答えていた。

 しかし、それからもう5年以上も経つが、その男性とは一度も会えていない。恋のキューピッドは一体いつ現れるのかと、待ち続けた日々を返して欲しい。

 さらに怖いのが、この時のA氏の言葉が「言霊」となって、今でも私を縛り付けていることだ

 もちろん、A氏の鑑定を受けた後にも、たくさんの男性と出会って恋愛をしてきた。

 しかし、彼らとの関係が危機を迎えるたびに「この人はきっと私の運命の人じゃない! そのうちに恋のキューピッドが現れて、あの人ともう一度恋に落ちる運命なんだから!」と、根拠のない期待を抱いてしまい、思い切って別れてしまうということを、何度も繰り返す羽目になったのだった。

 もしこの時、A氏の言葉に踊らされずに現実を見据え、私の方から詫びを入れ、彼らと仲直りしていれば、そのうちのひとりと今頃結婚して、子どもを2人は授かっていただろう。もしかすると、世田谷区とはいわないが、足立区や板橋区あたりにマイホームが建っていたかもしれない。

 言霊というのは人の人生をガラリと変えてしまうほど強力なパワーがあると実感させられる。

 もっとも、このA氏のように、「現在のことは透視できても未来が見えない」というのは、スピリチュアル業界にはよくあることなので、未来が霊視できないスピリチュアルカウンセラーに騙されないようにしてほしい。

 なぜ、こんなことが起きるのかというと、カウンセラー自身のエネルギーが汚れていて、他人の未来が見えにくくなっているからだ。眼鏡のレンズが曇っていると、目の前のものが見えないのと同じことだ。

 後で分かったことだが、この時、A氏には年下の妻がおり、離婚協議中であった。おまけに妻とは別に若い女性と交際していて、その女性はうつ病を患い「私と結婚しないと自殺してやる~!」と夜な夜な叫んでいるという話を人づてに聞いた。

 さらに尻軽なA氏は、この愛人とも別れ、いつからか私に狙いを定め、何度も執拗にデートに誘い、無視すると真夜中の2時に20通以上もLINEメッセージを送りつけるという奇行に走った。

 恐怖に駆られた私がA氏のブログを過去に遡って読んでみると、彼のカウンセリングは副業に過ぎず、本業はシステム開発エンジニアであることが判明した。同じ職種の知り合いに、A氏について話してみたところ、「貧乏なんて信じられない! システムをひとつ立ち上げるだけでも一千万単位でお金が入ってくるのに」と怪訝そうにしていた。

 ともあれ、A氏との一件で私は、「貧乏なのはともかく、本人が幸せを手に入れてない人に、他人を幸せにできるわけがないよね、トホホ」と思い知ったのであった。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
1
残り:0文字/本文:2887文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次