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スポーツの世界は学歴社会
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第4章 スポーツを終えたあとの人生

『スポーツの世界は学歴社会』
[著]橘木俊詔 [著] 齋藤隆志 [発行]PHP研究所


読了目安時間:41分
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 卒業後のスポーツ選手の人生

名門大学の体育会はやはり就職に有利


 大学で熱心にスポーツに取り組んできた学生が、卒業後、どのような職業につくかについて、これまで断片的ながら述べてきたが、ここでまとめておこう。

 学生がどの程度スポーツにかかわるかは、学校によって、どの体育会または運動部に所属するかによって、あるいは人によって、かなり異なる。朝から晩までほとんどの時間を練習や試合に費やしているケースもあれば、練習は授業や講義が終わってからほんの数時間しか行わないケースもある。いわば、スポーツを重視するか、学業を重視するかの違いである。

 前者の場合、卒業後も得意なスポーツを生かした職業につきたいと希望することが多い。そして、ごく一部の格段に優れた選手はプロの世界に進む。こうした人にとって、どこの学校を卒業したかはほとんど重要ではなく、本人の実力だけで通用する。しかし、あとで示すように、セカンドキャリアでは学校名が役立つこともある。

 あるいは、企業に就職して企業スポーツの選手として続ける人もいる。こういう人たちは恵まれたケースといえるが、そうした世界に進めない人、あるいは進まない人もいる。

 後者の場合は、学校も学生も、就職のさいにスポーツで習得したことを生かそうとは考えていないので、ここでは記述の対象としない。

 ただ、学業を重視し、スポーツはあくまでも趣味程度の学生でも、体育会や運動部に所属していると、就職のさいに少なからず有利に作用する可能性は高い。なぜなら、そういう学生は、一般にふつうの人より体力があり、団体競技を通じての協調性もある、と企業から見なされるからである。

 このことを端的に示す一例が、大学アメフト界で最強豪校として鳴らした京都大学のアメリカンフットボール部である。この部の学生は、ほぼ無試験で一流企業に就職しているなどとウワサされたことがあった。

 というのも、最難関の大学だから学力に問題はないし、激しい体力勝負のスポーツだから体力もある。しかも、ハードな練習に耐える精神力と、チームプレーを通じての協調性がある、と考えられたからだ。企業にすれば、こういう人材はぜひともほしい。だから、京大アメフト部は就職に有利だったのだろう。しかし、不祥事を起こして急速に弱くなったので、それも過去の栄光物語にすぎない。

慶應野球部に見る華麗なる就職先


 もう1つ、就職に強い大学として知られる慶應義塾大学を見てみよう。

 次の表は、2011年に卒業した慶應義塾大学の野球部員の進路を示したものである。これを見ると、ほとんどが一流企業に就職している。

『早稲田と慶応』(橘木俊詔著、講談社現代新書)で指摘したように、慶應の卒業生はその多くが実業界で活躍しており、ビジネス界に入るのなら慶應で学びたいとする人が多く、成功する人も多い。「ビジネスの慶應」という特色はここでも生きているのである。もちろん、慶應があからさまにスポーツ選手を優先的に入学させていないということも役立っている。

 なお、この表から、ごく数人が実業団に入って野球を続けているのがわかるが、この人たちはおそらく、野球選手を終えたらそのまま会社に残って企業人として働きつづけるのだろう。

 ついでながら、同志社大学の野球部出身者の進路についても確認しておこう。

 次の表を見ていただきたい。慶應ほどではないが、かなりの数の学生が有名企業に就職していることがわかる。


 また、私たちが早稲田大学のラグビー部を取材したとき、大学関係者からラグビー部員の就職は良好であるという話をうかがった。ラグビー部のOBの多くが有名企業に就職しているので、その引きがあるということだった。

 このように、慶應、同志社、早稲田の一部の運動部に所属する学生は就職先に恵まれているようだが、これはひとえに、これらの大学が名門大学として認識されているからである。入学試験が難しいから、体育会系の学生でも「学力に不足はない」と判断されたのだろう。また、各企業に就職した先輩たちの引きも、かなり効力を発揮しているようだ。

 ここで、2つ補足しておきたい。

 入試偏差値の低い大学に入ったスポーツ選手の就職はそれほど有利ではない、と想像される。有名企業はいうまでもなく、ふつうの企業でも、スポーツに秀でているというだけで、その学生を優先的に採用することはない。ただし、企業スポーツを実践している企業の場合は、スポーツの能力が相当重視されるので、そのかぎりではない。

 最近、スポーツ科学部やスポーツ健康科学部(学科)が創設されるようになり、スポーツが主、学問が従という大学で学ぶ学生が見られるようになったが、こうした学生がどのような進路を歩むようになるかがわかるには、もうすこし時間がかかる。ただし、これらの学部、学科では、主たる進路が体育教師、スポーツ指導者、スポーツ関連企業とされているので、一般企業への就職が有利か不利かを論じても意味がないかもしれない。

企業スポーツは生き残れるか


 高校、大学でスポーツをやってきた生徒、学生にとって、重要な就職先が企業スポーツチームである。野球、ラグビー、サッカー、バスケットボール、バレーボール、アメリカンフットボール、ハンドボール、ホッケー、アイスホッケー、陸上競技、スキー、スケートなど、多くの競技がある。

 日本で企業スポーツが盛んになったのは、企業が自社のイメージを高めるために、スポーツ活動に積極的に取り組んだからである。同時に、応援などを通じて社員の一体感を高めるという目的もあった。

 企業スポーツチームに所属する選手は、午前中は社員として働き、午後は練習、というのがふつうの形態であるが、年がら年じゅう、練習と試合に明け暮れるところもないわけではなかった。企業にとっては本業以外への費用の支出となるし、社員が本業に努めることにはならないので、経営面で余裕のある企業が企業スポーツを支えてきたのである。

 日本では、このような企業スポーツが、スポーツの振興に大きな役割を果たしてきたことはまちがいないが、長期にわたる日本経済の低迷による企業経営の不振から、スポーツへの支出額が減少するようになってきた。

 たとえば、日本野球連盟に登録している企業を見ると、1963(昭和38)年には237社を数えたが、いまでは87社にまで減少している(2012年8月3日現在)。これは、野球だけでなく、ほかのスポーツでも同じである。今後もデフレ経済と不況が続くことを前提にすると、企業スポーツをどうするかは大問題である。

 それを解決する1つの方策が、プロ化への道である。もっとも典型的な例が、サッカーである。ただし、すでに述べたように、サッカーのプロ選手になるのは高校の強豪校かJリーグのユースチーム出身が多く、大学サッカーの意味合いが弱くなっていることを、再度、指摘しておく。

 サッカー以外では、ラグビー、バスケットボール、バレーボールのように、セミプロ化を図っている種目もある。実業団として企業名を保持しながらも、いっぽうで入場料などを徴収して財政面を安定させようという手法である。ただし、プロ化やセミプロ化が困難な種目や団体もあるので、いわゆるクラブチームの形態で、さまざまな組織が運営費用を負担しているケースもある。

 プロの世界やクラブチームの世界において、学校を卒業するスポーツ選手の多くを吸収できる可能性は残されているが、クラブチームの形態はまだスタート台に立ったばかりであり、どのように運営していくかはこれからである。
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