『10代の子どもが育つ魔法の言葉』
[著]ドロシー・ロー・ノルト
[著] レイチャル・ハリス
[訳]雨海弘美
[発行]PHP研究所
子どもには自信をもってもらいたいと、親は望んでいます。勉強にも課外活動にも、自信をもって積極的に取り組んでほしいと思うのです。けれども、もし、失敗が度重なれば、大人よりも心が幼い子どもは簡単に落ちこみ、自信を失ってしまいます。「ぼくには(わたしには)、力がないんだ」と萎縮してしまうのです。自分はだめな人間なのだと思いこんでしまったりします。
がんばってもうまくゆかないと思えば、大人だってつらくなります。いっそ、最初から努力しなければ、傷つかずにすむのです。ですから、どうしていいかわからないまま、あっさりとあきらめるようになってしまうのです。
こんなとき、後ろ向きな姿勢を見抜いて、成功への道はひとつではないことを伝えてあげるのが親の役目です。何かほかにすぐれた才能をもっているかもしれませんし、今、苦手なことも、努力すれば得意になるかもしれません。
気持ちの浮き沈みの激しい時期です。失敗や失望が積み重なれば、大きな挫折感につながりかねません。どうか、ふだんから子どもの気持ちの浮き沈みに敏感になってあげてください。そして、希望をもって歩いてゆけるようにしてあげてください。
理科が嫌いなニッキー
14歳のニッキーは理科の授業がいやでいやでたまりません。このままでは合格点をとるどころか、途中で投げだしてしまいそうです。子どもの挫折を目にしたお母さんがよくそうなるように、ニッキーのお母さんも動揺しました。怒り、失望、いらだち、愛情とさまざまな思いにとらわれました。
お母さんは動転しています。ニッキーは挫折感を抱え、悲観的になっています。この状態では、とても率直な話しあいなどできません。ニッキーから「理科は、大嫌い」という言葉以上の情報を聞きだすには、まずお母さんが落ち着かなければなりません。
どんな子どももいつかは壁にぶつかります。物事を悲観し、他人を責め、絶望します。このことを心にとめておけば、わが子が壁にぶつかったときに、必要以上に動揺しないですむでしょう。壁にぶつかったところで、すべてが終わったわけではありません。わたしたち大人は、経験からそのことを知っています。ニッキーの態度を和らげ、理科の成績をあげさせたいなら、じたばたせずに大らかにふるまうべきでしょう。ニッキーは、「できない」ということで、もうじゅうぶん、傷ついているのです。