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野茂英雄 日米の野球をどう変えたか
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第4章 ノーヒッター

『野茂英雄 日米の野球をどう変えたか』
[著]ロバート・ホワイティング [訳]松井みどり [発行]PHP研究所


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五億人の観客

 あらゆるスポーツの中で、野球のボールを打つほど難しいことはないといわれている。ボールは時速144〜145キロで飛んでくるばかりか、突然左や右に曲がったり、ホップしたり落ちたりする。バッターは瞬時にこの動きを把握し、つるつる滑る木材をこれにぶつけて、願わくば野手のいない場所に落とさなければならないのだ。

 同じく、野球の球を投げるほど難しいことはない、ともいわれている。ピッチャーはミカンほどのサイズの小さな球体を、一八・四四メートル離れた小さな四角の中の特定の場所――内角高めとか、低めとか、外角とか――に投げなければならない。しかも投手は、打者がバットを振るよりも速いボールを投げるか、一定方向に球を変化させて、打者を翻弄(ほんろう)する必要がある。メジャーリーグの最高のピッチャーでさえ、これをコンスタントにおこなうのは難しい。

 野茂英雄のすごさは、投球のメカニズムに、さらなる高度なテクニックを加えたことだ。例のユニークなモーション、片足に体重を乗せたまま体をひねり、背中を打者に向けてから、ほぼ完全な円を描くように体を回転させて投げる。これでは打者は、バットを球に合わせることができない。

 当時野球をやっていた世界各国――日本、アメリカ、カナダ、ラテンアメリカ諸国――の野球人口を合計すれば、野茂は一〇〇万人、いや、さらに正確にいえば五億人以上のファンを惹きつけたことになる。これだけのことをできる人間は、球界に野茂しかいない。

 メジャーリーグの二年目、彼は着々と偉業を成し遂げていった。

 実際、彼のメジャーリーグでの最盛期は一九九六年だとの声があるほどだ。

パク・チャンホとの独特の温かい関係

 野茂英雄は、三年で四二五万ドルという契約――一九九六年に六〇万ドル、一九九七年に九〇万ドル、一九九八年に二七五万ドル――にサインしたあと、16勝、防御率3・19、228イニングで234奪三振という好成績をあげたばかりか、球史に残る驚異的なピッチングを披露した。同年九月、コロラド州デンバーで、ノーヒッターを達成したのだ。

 野茂マニアは二年目も続いた。相変わらず日本からマスコミ軍団がロサンジェルスに押し寄せた。ドジャースタジアムでおこなわれた野茂のシーズン初先発試合に向けて、日本のマスコミ用に合計一〇九枚のプレス証が発行された。これはドジャース関連のマスコミ全体の三分の二以上にあたる。プレス用通用門のスタジアム保安係が、思わずこう言ったほどだ。
「そのうち俺たちはみな日本語で話すようになるぞ」

 ドジャースタジアムに新装開店した日本食レストランのスタッフも同感だ。野茂のピッチングを観たい一心で、相変わらず日本のビジネスマンやファンが、東京と大阪から飛んできたばかりか、ロサンジェルスの日系人も、野茂の試合を観に、スタジアムへどっと押し寄せたからだ。彼がメジャーリーグで初のシャットアウト勝ちをおさめたとき、ファンは狂喜した。殿堂入り確実の左腕投手、トム・グラビン率いるアトランタ・ブレーブスを、わずか3安打に抑えたのだ。数日前、ヒューストンでアストロズに5―2で負けて、一九九六年の黒星スタートを切ったばかりだったが、このシャットアウト勝ちでみごとに立ち直ってみせた。

 野茂はシーズンを通して好調だったが、チームに新たに加わった韓国人投手に、ときにはお株を奪われるシーンもあった。二十二歳のパク・チャンホ(朴賛浩)という選手で、マイナーリーグからフルタイムのリリーフとしてドジャースに昇格し、48ゲームに登板。翌年には先発に回って、14勝をマークした。身長一八八センチ、体重九〇キロと、体格は野茂とほぼ同じパクは、156キロのストレートを武器にして、ごく自然に日本人スター野茂のライバルとなった。
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