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人はなぜ「占い」や「超能力」に魅かれるのか
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生き方・教養
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はじめに

『人はなぜ「占い」や「超能力」に魅かれるのか』
[著]樺旦純 [発行]PHP研究所


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 ここ十数年、日本ではSFやホラーブームが続いている。最近ヒットした映画やベストセラー小説の多くは、SFやホラーといったジャンルである。

 怪奇現象やオカルト、超能力、念力、UFO、宇宙人とのコンタクト、ポルターガイスト、テレパシー、チャネリング、霊能力、呪術など、不思議現象に関する情報は、若い世代ほど興味を示すようだ。

 各種の世代別に見た調査でも、二、三十代では半数以上が超能力や不思議現象について「興味がある」「実在すると思う」と答え、文系よりも理系の人のほうが関心度が高かったという報告がある。

 科学的知識では説明のつかない現象に対しては、理科系の学生のほうが、否定的な考えを持っているように思えるが、彼らは科学のすべてを信じているわけではないらしい。むしろ、「この世にはまだ未知の分野がある」と不思議現象を肯定的に受け止めている回答が多かったのだ。

 モノがれ、タテマエとしての価値観が崩壊しつつある現代、人々が求めるのは「こころ」である。

 私たち人間にはまだ知られていない不思議な能力があり、科学的にまだ解明されていない神秘な世界が存在する……。そんなことを想像するだけで夢があるし、わくわくしてくることは確かだろう。そうした未知の世界に対する好奇心や憧れが、今日の科学や知識の進歩を築いてきたともいえる。

 人は見慣れないもの、得体の知れないものに対しては恐れを抱く。同時に、「怖いもの見たさ」の心理は古今東西を問わず人間特有のものである。

 いわゆる不思議現象は、超常現象(paranormal phenomena)と言い換えることもできるが、かつては心霊現象と呼ばれていた。

 幽霊、霊魂、霊媒など、神秘的で不可解な現象は霊のしわざだと考えられていたのである。いくつかのケースは、インチキであることが判明しているが、現代の科学知識では説明のつかない現象が存在することは否定できない。そしてまた、不思議現象が若者を惹きつけているのは事実である。

 ここでは、不思議現象が実在するかどうかを検証するつもりはない。そのような本はたくさん出版されているので、専門的なことはそちらを参考にしていただければいい。

 ただ私自身は、「科学的に何の根拠もないものは、みんなインチキだ」という結論を下す気はない。なぜなら、何かが「存在する」ことを証明するために実例を挙げなければならないのだとしたら、同時に「存在しない」ことも証明しなければならないからだ。

 アメリカの著名な心理学者で哲学者でもあるウィリアム・ジェームズはこう述べている。
「白いカラスが存在する」ことを証明するには、白いカラスを捕まえればいいが、存在しないことを証明しようとしたら、すべてのカラスを調べなければ証明したとはいえないのだ。仮に一〇〇〇羽のカラスを調べて白いカラスは存在しないことを確認しても、もしかしたら一〇〇一羽目が白いかもしれない。あるいは、昔いたか、未来に生まれるかもしれない。つまり、存在しないことを証明するのは不可能に近いのである。

 これは、不思議現象についてもいえるのではないだろうか。科学者の中には、超能力や霊魂は存在しないと主張する人もいるが、それらが「存在しない」ことが証明されないかぎり、いくら主張しても無意味である。神様は存在するかしないかという議論と同様、水かけ論になってしまいかねない。

 もちろん、私は科学者でもなければ奇術師でもない。不思議現象は「あるかもしれないし、ないかもしれない」と仮定したうえで、心理学的かつ客観的に解析していこうと思う。それにはまず、人工的なイカサマが行なわれたケースがあるかどうかを確認し、それらを除外していかなければならないだろう。

 不思議(超常)現象の多くは、トリックを使うなどインチキなものであることから、頭から疑ってかかる人は多い。しかし、超能力は存在するかしないかといった議論をするとき、もっとも危険なのは、「この目で見ないかぎり、信じられない」という考えである。「百聞は一見にしかず」で、実際に見たものに説得力があることは確かだが、超能力に実はトリックが使われていた場合だと、そのトリックを解明できなければ、「この目で見た以上、信じるしかない」ということになってしまう。むしろ、そういった人たちのほうが、不思議現象のような体験を持つと見方が一変して、信奉者になってしまうこともあるのだから、まさに不思議である。

 また、目で見たことが必ずしも正しいわけではない。不思議現象については多くの目撃報告があるが、そのほとんどは目の錯覚か、記憶違いだったという報告もある。人は自分自身の感覚や判断を過信する傾向があるが、人間の知覚や記憶ほど不正確なものはない。

 空中の小さな光をUFOと見間違えたり、超能力のトリックに騙されてしまうのは、感覚器官はもとより、先入観や思い込み、予期といった人間が陥りやすい思考の罠だといえる。

 本書では、超常現象をめぐる人々の心理的側面を中心に述べてみた。

 人々は、なぜ不思議現象に魅かれるのか。

 神秘的、非科学的な世界は存在するのか。

 目撃された霊の正体は何だったのか。

 人は、なぜジンクスや占いなど非合理なものを信じてしまうのか。

 いつの時代でも予言がもてはやされる理由は何か。

 不思議現象、心霊現象の歴史は古い。そこには、多くの人たちが関わっている。

 本書を読み進むにつれて、超常現象と呼ばれるものには、いかに数多くのトリックが使われたかを知ることになるだろう。あるいは、何の実体もないものを、多くの人が体験していることに驚かれるかもしれない。しかし同時に、実は私たち人間こそが、いかに不思議な生き物であるかを再発見するはずだ。

 そう、もっとも不可思議なのは、私たちの「こころ」なのである。

 本書を通じて、もう一度、あなたの「こころ」を探ってみてほしい。不思議現象を肯定するのも否定するのも、すべてはあなた次第だ。なぜなら、それらの現象は、外界で起きたものではなく、実はあなたの中でつくり出されたものかもしれないのだから。

 最後になりましたが、本書の刊行にあたり、またまたひとかたならぬご尽力をいただきましたPHP研究所文庫出版部の平賀哲史さんに、深く感謝いたします。ありがとうございました。


 二〇〇二年十一月
樺 旦純 
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