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不況ではない、衰退だ! どうする、日本
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政治・社会
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第一章 いまは不況ではない。日本の衰退がはじまった

『不況ではない、衰退だ! どうする、日本』
[著]日高義樹 [発行]PHP研究所


読了目安時間:32分
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1 不況ではない、衰退がはじまった



 日本の銀行を国有化せよ


 久しぶりに降った雪がアイストリートの脇に積み上げられて、日の光を反射してまぶしかった。その時ちょうどアイストリートの脇にある教会が十二時の鐘を鳴らしはじめた。
「ブッシュ元大統領が湾岸戦争の成功を祈ってこの教会に行ったのは、ちょうど十年前だった」

 こんな思いが頭をかすめた。アイストリートを南に回ってすぐ右側に、ブッシュ政権が主として共和党の支援者やアメリカ国内のVIPのための特別なブリーフィングを行う迎賓館がある。

 剥き出しの鉄製の階段を昇って三階まで、そして右の部屋に入るともう十数人の人が詰めかけていた。まもなくカール・ラブ顧問がブッシュ大統領のアフガニスタン戦争についての作戦や政治的な見通しを、共和党の重要な支持者たちに説明することになっていた。私はハドソン研究所のシニアフェローの一人として招かれたのだった。

 まもなく二人の若いホワイトハウスのスタッフが入ってきた。
「ラブ顧問が来る前に、経済状況や世界の政治動向について説明をさせてもらいます」

 国家安全保障会議の若いスタッフだ。彼らは集まった人たちに分厚い書類を渡した後、部屋の脇にある黒板の前に立って説明をはじめた。
「いま一番心配されているのは中国経済と日本の金融です。特に日本の金融機関が崩壊した場合には、アメリカの一兆ドルを超すアメリカ政府債を売って日本国内へ持ち帰る懸念がある。そうなればドルが世界中に溢れてひどいことになりそうだ」

 この説明に西部から来た大牧場の持ち主がすぐに反応した。
「日本の銀行を国有化させるという例のホワイトハウスの構想はどうなったのか」
「今度大統領が日本と話し合うでしょう」

 この大牧場主が触れた日本の銀行の国有化というのは、日本の銀行がいまや正常な機能を果たさなくなってしまった、と心配したアメリカの一部の勢力が対応策として考えているものであり、日本の金融機関をまったく信用していないところから出て来た構想だ。

 この日本の銀行の国有化は、日本全体に対する不信に基づいており、特に日本の政治家や金融界、日銀、財務省に対する徹底的な不信感と疑惑が底流にある。日本の銀行の国有化を求めるアメリカの声は、世界における日本の銀行に対する不信の象徴であり、歴史的に見れば経済大国といわれてきた日本の衰退の大きな第一歩である。


 日本円は、もはや注目も信頼もされていない


 同じように日本の衰退はウォール街でも極めて顕著になりはじめている。ウォール街の有名なトレーダーが私にこういったことがある。
「日本の通貨と株はいまやメキシコやカナダ並になってしまい、いわばローカルカレンシーでありローカルアセットである」

 日本円がローカルカレンシーとなった結果、ウォール街のアナリストやトレーダーは日本円の強さや先行きについてほとんど注目しなくなってしまった。この現象もまた日本衰退の大きな動きの一つといえる。日本はついこの間まで経済大国といわれ、物づくりやあるいは経済全体のボリュームでは依然として世界第二の強さを誇っている。しかしながら経済の中心になる通貨、及び金融を取ってみるとすでに衰退がはじまっており、趨勢(すうせい)としてはもはや後戻りはできない恐ろしい状況になりつつある。

 アメリカ政府やアメリカの資産家たちは日本の知らない所で日本の銀行の国有化、つまり現在のシステムを変えてしまうことを要求し、ウォール街は日本円をもはや一流の国際通貨とは考えなくなってしまった。日本では「アメリカは日本に連邦債を買ってもらえなくなれば崩壊してしまう。日本の稼ぎ出す貿易黒字がなければアメリカ経済は成り立たない」と信じられている。

 このことは事実であるがアメリカではそうしたアメリカの赤字をうめ、アメリカの貯蓄のなさを補っている日本の通貨はメキシコ、カナダ並に扱われており、金融の面で考えれば日本の力そのものが大きく後退し、すでに衰退の道を歩んでいると思われている。

 この後会場にやってきたカール・ラブ顧問はもっとはっきりと日本の世界における立場が弱まってしまったことをいくつか説明した。少なくとも金融問題を考えれば、極めて残念なことに日本はいまや落日の国なのである。これは日本経済そのものが傾いてしまったということよりも通貨の背景にある政治や国の仕組みが外国から信頼されなくなったことに基づいている。

 日本の政治家の理念のなさや、狭さや古さが日本を全体として衰退させているのである。カール・ラブ顧問の説明が終わった後、会場ではエネルギー問題や防衛問題についてホワイトハウスのスタッフ達がそれぞれ現状や見通しの説明をはじめたが、私は中座をして部屋を出た。

 階段の下にはいつものように太った中年の女性が顔だけ上げて「どうぞそのまま出て行って下さい」といった。この普通の中年の女性は実は海兵隊からシークレットサービスに出向している特技軍曹で、ついこの間アフガニスタンから帰ってきたばかりだった。テロに備えてホワイトハウスは見えないところで警備を強化している。

 この後私はホワイトハウスの前にある商工会議所に寄って、トム・ドナヒュー会長に会い、車で国防総省に行くことになっていた。国防総省ではラムズフェルド国防長官と久しぶりにテレビのインタビューをすることにしていた。


 物づくりも技術も否定されている


 この頃、国防総省の二階にあるラムズフェルド国防長官のダイニングルームで重要な会議が終わろうとしていた。ラムズフェルド国防長官の武器開発担当補佐官が会議室の脇に立って、十人ほどの年取ったアメリカ人に国防予算と兵器開発の見通しについて説明を終えようとしていた。彼はこういった。
「いま説明したように我々はアメリカ及び同盟国の企業の能力について再確認を行っている。
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