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不況ではない、衰退だ! どうする、日本
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政治・社会
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第二章 アメリカの景気は回復する、しかし日本に奇跡は起きない

『不況ではない、衰退だ! どうする、日本』
[著]日高義樹 [発行]PHP研究所


読了目安時間:32分
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1 ドットコム・レボリューションがすすむ



 日本人はみんな奇跡を待っている


 二〇〇一年十二月十七日、ニューヨークは暖かい冬の日だった。ワールドトレードセンタービルに対するビンラーディンのテロ事件以来すでに三カ月たっていたが、ニューヨーク中は依然として超警戒態勢にあり、マンハッタンでは朝早くからパトロールカーが赤いランプを点滅させて走り回っていた。午前十時ちょうど二十三番街にあるチェルシースタジオの一番大きなスタジオに、テレビ公開録画のためにヘンリー・キッシンジャー博士が現れた。

 スタジオの舞台の反対側には椅子席が作られ、キッシンジャー博士のインタビューを聞こうという人たちですでに満員だった。キッシンジャー博士の私の番組のための公開録画はもう七年もつづいており、この日は日本からの観客も何人かいた。キッシンジャー博士はいつものように丸々とした身体でニコニコしながら舞台から現れて椅子に座った。

 この日の公開録画にはアメリカ最大の会計会社KPMGの日本代表吉原寛章さんが録画に加わることになっていた。吉原さんは日本人でたった一人KPMGの重役となり、国際関係や日本部門の責任者をしている。彼はキッシンジャー博士が座ると話し出した。
「日本の経済はずっとあまりよくない状態がつづいています。これからどうなるか我々も大変心配していますが、日本の経営者はなんというか突然いつか奇跡が起きて事態がすべてどんでん返しになり、大変な好況があっという間にやってくると考えているようですよ。奇跡を待っているとでもいうのでしょうか」

 キッシンジャー博士が笑顔を一層くしゃくしゃにしていった。
「私も気がついているが、そうなんだ。みんなが奇跡を待っている」

 日本人が景気回復のために奇跡を待ち望んでいるのは国民性として楽天主義なのか、あるいはもう奇跡以外に頼るものはないという八方破りになってしまったのか。さらにはまたすべては神頼みという無責任さのせいか私にはわからないが、そのことには私も前々から気がついていた。

 日本の人たちのそういった奇跡への願望は、いつかアメリカの景気がよくなってそれに引っ張られて日本の景気もなんとかなるのではないかという思いのようでもある。つまりすべてはアメリカの景気次第、あるいは神様まかせといったところだろうか。


 アメリカは二〇〇二年立ち直る


 そして二〇〇二年、アメリカ経済は、明らかに最悪の事態を乗り越え、景気回復に向かいつつある。

 ウォール街の私の友人はこういった。
「二〇〇二年はアメリカの景気がよくなって世界を引っ張る。世界中の景気をよくする原動力になると思われる。ホワイトハウスもまた二〇〇二年アメリカの景気はよくなると考えており、二〇〇三年にはアメリカ人の消費購買力が増えればもっとどっとよくなってくるという見通しを持っている」

 二〇〇一年の暮れ、ハドソン研究所でホワイトハウスの首脳を大勢迎えてクリスマスパーティーが開かれた。

 ハドソン研究所はブッシュ政権に最も近い共和党のシンクタンクで、未来学と国際問題を中心に多くの学者を抱えており、私もNHKを辞めた一九九二年以降ここで安全保障問題を研究している。

 ブッシュ政権が成立して以来、ざっと勘定しただけで実に三十人以上がホワイトハウスの重要ポストに就いている。予算管理局長のミッチ・ダニエルズ博士もその一人で、パーティーのメインゲストの一人だったが、アメリカ議会との交渉が長引いて結局は顔を見せなかった。

 代わりにやってきた彼の補佐官の一人がミネラルウォーターを片手にゲストたちと話し合っていた私たちのところへやってきてこういった。
「我々は二〇〇二年景気がよくなるという強い自信を持っている。アメリカの経済力を背景に新しい国際体制が確立しつつあり、大統領は日増しに自信を強めている」

 このあと私の番組のためにニューヨークでインタビューしたヘンリー・キッシンジャー博士も同じ意見でこういった。
「アメリカの景気はまもなくよくなるだろう。ドルは当分の間は強くなりつづけ、ブッシュ大統領の人気も高いままだろう。これからブッシュ大統領に挑戦しようという政治家は出てこないだろう」


 回復の要因はやはりドットコム・レボリューション


 しかしながら日本人の待望どおり二〇〇二年アメリカの景気は回復するかもしれないが、日本の景気が飛躍的によくなるという奇跡が起きることはほとんど期待できない。その理由は、それほどはアメリカの景気は大幅には拡大せず、今度の景気の回復は設備投資の更新などによる小型のものになるだろうと予測されるからだ。

 アメリカの景気はよくなったとしても日本経済を一挙に好景気に連れて行くとは予想されていない。その問題は後で述べるとして、まずアメリカの経済が二〇〇二年回復する理由である。

 アメリカ経済がこれから急速に回復する最大の理由は、ドットコム・レボリューション、インターネットの利用が着実に拡大し競争力を飛躍的に高めていることだ。

 例えば、通信業のリーダー、AT&Tはいまや百万人以上の顧客に請求書をオンラインで送っている。クレジット会社のアメリカンエクスプレスはウェッブレポート、オンラインでカードの使用状況を報告するサービスを行っており、着実にカードの利用者を増やしている。

 アメリカ最大のアルミニウム会社アルコアは、在庫管理をはじめあらゆるシステムをコンピューターによって合理化する「E‐イニシアティブ」を完成させ、金融機関シティグループでは、世界中の顧客一千四百万人がオンラインサービスを受けている。

 このほかディズニー、エクソン、ジェネラルモーターズなども本格的なオンライン・システムを採用し、経費を削減して在庫の調整を行っており、アメリカがITの利用で経済的に再び大きく動き出したことを示している。
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