『いますぐ人生をひらこう 正しく生きるヒント』
[著]船井幸雄
[発行]PHP研究所
本書の親本(新書判ハードカバー)の原稿は、いまから一年半ほど前、九七年(平成九年)の秋に書きました。去年(九八年)一月にその本が発刊されたときは、「わかりやすく、実践しやすく解説されている」と、二十代を中心に十五~四十歳の方々から好評を得、いまなお多くの読者から手紙をいただいたりします。
ところで、本書の原稿を書いてから一年半ほどの間に多くのことがわかりました。
その中のいくつかを述べますと、①不正常なものを正常化させるエネルギーがあり、それは微細エネルギーのようだ(佐々木茂美著『「見えないもの」を科学する』サンマーク出版)、②正しい環境下では競争は発生しないようだ(拙著『人間のあり方』PHP研究所)、③世の中は、いま急速によい方向に変りつつある(拙著『人の道』ビジネス社)、④世の中の構造がわかってきた。「あの世」が実存の世界であり、「この世」は投影の世界と考えたほうが合理的だ(森田健著『不思議の科学』同朋舎)などですが、基本的にいえば、「人の生き方、特に“よい思い”で生きることがもっとも大事だ」ということになります。
それとともに、「人生は愉しく生きるべきだ」ということもわかってきました。
それらにつきましては、拙著では『躾』(九八年七月、ビジネス社)、『ツキを呼ぶ心と身体の癒し方』(九八年七月、経済界)、『船井幸雄の人生の愉しみ方』(九九年二月、大和出版)などに詳述していますので興味のある方は御一読ください。
さて、本書の題名である『いますぐ人生をひらこう』というのは、いまの私の知識でまとめますと、「よい思いで生きることができるようになること」といっていいようです。
そのためには、人間性を向上させ人材になればよいことがわかってきました。
そのポイントを、まずここで簡単に述べておきます。
人間性を向上させるには、①長所を伸ばすこと、②人に好かれるくせづけ=躾を身につけること(具体的には自慢しない、
約束を守る、
不平・不満・悪口をいわない……などのくせをつけるとよい)、③ほんものの生き方を志す(具体的には
なるべくムダをしない、
なるべくなんでも好きになる、
なるべくこだわらないようにする、
良心にしたがう)とよいようです。
また人は、人間性が向上するにしたがい、①否定や批判が減り、②きらいなことが少なくなり、③不平不満が減り、④こだわりが減り、⑤差別や区別をしなくなり、⑥他人を脅したり、心配させなくなり、⑦悪口をいわなくなり、⑧自慢しなくなり、⑨約束が守れ、⑩自他の長所に目がいき、それをのばしたくなるようです。
それとともに、人材になっていきます。
一般に人材には七要件があるといわれています。それは、①自分にプライドを持っている、②自分の所属するところへのロイヤリティがある、③謙虚で誠実である、④自主性があり責任のがれをしない、⑤勤勉である、⑥互助の精神に富み、⑦できるだけ信頼しようとこころみる……の七つです。
このようになってくると、「人生をひらくこと」ができ、常に「よい思い」で生きられるようなのです。以上は私のここ一年半の研究の総まとめです。
私は、これを「ほんものの生き方をする」といっていますが、いま「ほんものの生き方」を目ざす人が急増しています。うれしいことです。それらにつきましては、前述の拙著『人の道』をご一読ください。
新書判ハードカバーを発刊してから一年余りということもあり、この文庫判の内容には、ほとんど手を加えませんでした。
本書をお読みのうえ、ここで紹介しました本などを参照していただき、人材になることを目ざし、常に「よい思い」で生きることをぜひお願いします。そして人生を愉しんでください。
きょうは一九九九年二月十三日、東京は寒く風が強いのですが、空には雲一つなく日本晴れです。澄み渡っています。
本書の読者の心が澄み渡ることを祈り、「文庫版のためのまえがき」のペンをおきます。
一九九九年二月十三日
東京・高輪の自宅書斎で
船井幸雄