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(2021/11/26 追記)

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生き方の極意 新人間主義のすすめ
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生き方・教養
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1 企業社会では「競争」より「良心」へ

『生き方の極意 新人間主義のすすめ』
[著]船井幸雄 [発行]PHP研究所


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 地価と物価は値上がりするものというのが常識でした。


 しかし日本の地価は、一九九〇年に比べて、いまではたいていのところは半値以下になりました。


 また、最近は、物価が下がりはじめました。世界でいちばん物価の高い大都会といわれた東京が、いまでは先進国の大都会では真ん中ごろになりました。まだまだ東京というか、日本の物価は下がりそうです。


 日本では、九四年三月まで、百貨店は連続二十五カ月、前年同月よりも売上が下がり、スーパーも連続十九カ月下がっていますが、それの主要原因は物価の値下がりにあります。最近では、客数や買い上げ点数は前年よりも増えているところが多いのですが、単価が下がっているために、売上総額は前年同月より下回っているのです。


 物価の上がる可能性はいまのところほとんどありません。これは経済構造が大きく変化したからだといってよいと思います。


 日本はいまアメリカやドイツとともに、世界の最先端を走っています。その日本の最先端を行くのが経済の動きです。そこでは現実にデフレが進行しつつあるのです。


 消費者は物価が安くなることを単純に喜んでいますが、このまま行きますと、「近代」といいますか、「資本主義」の経済制度が崩れます。それは大変なことなのです。なぜなら、個人消費がGNP(国民総生産)の六〇%を占めることから考えましても、景気はよくならないでしょう。これは大変化の一つの現象です。いままでは景気は落ちこんでも、簡単によくなったのです。


 それらの現象を、どのように読むかは別の折にします。


 ともかく、本章ではいま第一線でおこっている大変化を、実際の現象を例としてとりあげ、なるべく簡単に解説いたします。


──いままでは競争により品質と価格が保証されていたが、これからは良心により保証される──




 売上も利益高も群をぬいて世界一の小売業は、アメリカのアーカンソー州に本社のあるウォルマートです。


 店舗数は系列店をいれると約二千五百店、年商約七兆五千億円、経常利益は四千億円強、従業員数は約五十万人というのが同社の現状規模ですが、ウォルマートは創業者のサム・ウォルトンさんが、わずか二十数年、一代でつくりあげた会社です。ウォルトンさんは、一九九二年四月に七十二歳で亡くなりましたが、その経営理念と方針はいままでの経営者の一般常識とは一風変わっています。


 とりあえず紹介しましょう。

 自分の仕事にのめりこもう。その可能性をだれよりも信じよう。

 すべての社員をパートナーとし、利益を分かちあおう。

 パートナーのやる気を高めるために全力投球をしよう。

 できるだけ知らせよう。

 社員の行なうことのすべてを高く評価しよう。

 成功すれば喜ぼう。失敗しても、その中にユーモアを見出そう。

 てってい的に社員や客の話を聞こう。

 客の期待をこえよう。

 競争相手より上手に経費をコントロールしよう。

 より上を目ざし、他とはちがう道を行こう。

……の十項目ですが、ウォルトンさんは、自らをこれらを完全に実行しました。ウォルマートもこの方針どおりの企業になりました。


 それらは同社の特質といわれる返品制度にあらわれています。ウォルマートでは、いつでも、どんな理由でも、お客さんが返品したい物は、返品を受けつけています。レシートがあれば即返金しています。各店とも、この返品コーナーは、入口の近くのわかりやすいところにあり、どんな場合でも店員が喜んでニコニコして受けてくれます。気持ちよく返品できます。


 ウォルトンさんの考え方は、いい方をかえれば時流対応や競合対応よりも原理原則を優先させた経営をしようということです。したがって同社では、ある商品を一定期間だけ特別に安くして客を引きつけるというような売り出しは決して行ないません。


 わかりやすくいいますと、価格や品質は良心によって決めるべきで、決して競争によって決めるものではないという大原則をつらぬいてきたのです。


 このような方針ですから、会社内では真の一体化ができ上がりました。五十万人の従業員中四十万人以上が同社の株主であり、全員がウォルトンさんの方針や哲学に惚れこんでいます。その考え方が天地自然の理といいますか、正しい原理原則に叶っているのですから、だれもが納得できるのです。


 それが最善の客志向につながり、社員の生きがいにつながり、「まじめで泥臭いがすばらしい」という評価になり、あっというまに世界一の小売業になったのです。


 この一例でもわかりますように、いま日本やアメリカ、ドイツなどの経済先進国では、「真の客志向=価格と品質は、良心で決めよう」という考え方が経済界に急浮上してきました。


 なぜなら、そのような企業が、客に喜ばれ売上も利益も急増しますし、従業員も本当に楽しく働くようになるからです。


 船井総研の顧問先企業は約五千社ですが、このうち二百五十社くらいは不景気の現在も伸びつづけていて、そのうちの百社くらいは、このような方針と理念の会社です。


 私と親しい会社で、このような理念と方針で好業績の会社を少し紹介します。

「損と得の道あらば損の道を行こう」という大阪に本社のあるわが国フランチャイズチェーンの第一人者ダスキン、

「一〇〇%のユーザー直結システムでよい物を安く」をモットーにしている名古屋に本社のある食料品製造販売業の名古屋製酪グループ、

「良い物を安く売りつづけられるシステム」で衣料小売店に救世主といわれている名古屋の衣料品問屋、八木兵、

「髪のことで悩む人たちの真の味方になろう」ということで禿頭族に心底から喜ばれている東京に本社のあるスヴェンソン、


 徳島県の脇町に本拠のある「美と花の心を追求」する日本一のシンビジウムメーカー、河野メリクロン、

「自顕流の技と心で焼酎づくり」をし、いまでは「若き薩摩の心」といわれる鹿児島県溝辺町の錦灘酒造、


 商圏人口三十万人余で八百数十億円の年商、経常利益も数十億円。「小売業のカガミ」と私がいっている愛知県津島市に本拠のある総合小売業、ヨシヅヤ、

……このように挙げていけばきりがありません。


 たちどころに数十社の企業名は出てきますが、各社とも「良心に(のつと)り、真の客志向」をモットーにしている企業です。時流や競合よりも正しい原理原則を優先した理念、方針で経営しています。


 少なくとも、一九八五年ころまでは、このような考え方をする企業はほとんどありませんでした。


 八五年ころまでの日本では、企業経営の目的は収益性の追求が第一で、それと併行して社会性(世の中のための必要性)を追求しようというのがたいていの経営者の本音だったのです。事実、このような考え方で充分に経営ができ、業績も伸びてきました。


 ところが、いま日本では多くの経営者たちが、企業経営の第一目的は教育性の追求だと考えるようになりました。


 教育性というのは、人間性を引き出すことです。企業で働く人や企業と付き合う人々の人間性を引き出し高めるのが企業経営の第一目的で、その結果として社会性が追求でき、収益性も追求できるという考え方が、いま強くなっています。


 その理由は、このような考え方のほうが、経営者の良心にも合致し、経営も順調に進められることに気づきつつあるからです。


 いまでは収益性の追求のため、自然を損なうことや良心に反することをしますと、従業員がついてこなくなりましたし、客からも相手にされなくなりつつあります。


 このように、時代の最先端を行く日本の企業社会で、いま大きな変化がおこっており、これはアメリカでウォルマートが大躍進したのと同じように、これからの世界の流れを予測させるものといってよいと思います。


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