『子どもが育つ魔法の言葉』
[著]ドロシー・ロー・ノルト
[著] レイチャル・ハリス
[訳]石井千春
[発行]PHP研究所
子どもは、スポンジのように親の言葉や行動のすべてを吸収し、学びます。親が真似てほしくないと思っていることも、覚えてしまいます。ですから、もし、親が、わが子のことだけでなく、他人や世の中にも不満だらけで、いつも文句ばかり言っていたとしたらどうでしょうか。子どもは、そんな親から、人をけなすことを覚えてしまうでしょう。そして、自分自身のことも責めるようになってしまいます。物事のいい面をではなく、悪い面を見て生きてゆけと、子どもは教わってしまうのです。
不満だらけの親の気持ちは、ものの言い方や、ちょっとした仕草や目つきに表れます。相手に不満があるときには、自然に目つきや物言いがきつくなるものです。小さな子どもは、こういう親の態度にとても敏感で、傷つきやすいものです。たとえば、「もう寝る時間ですよ」という一言にしても、言い方次第で、まったく違った意味を持ちます。いつも子どもにイライラしている親は、「なにをぐずぐずしているんだ」という非難をこめて、この一言を発するでしょう。子どもは、自分が責められていることを感じ取ります。そして、自分は愚図なのだと思ってしまうのです。
もちろん、わたしたちは誰でも、ときには不機嫌になることがあります。つい小言や文句を言いたいときもあるものです。けれども、いつも不平不満を口にし、人の欠点をあげつらっているとしたら、話は別です。親がいつもそんなふうだとしたら、家の中は暗く、とげとげしくなってしまうでしょう。家庭を、そんな場所にはしたくないものです。家庭とは、子どもがのびのびできる安らぎの場であるはずです。そんな家庭をつくることが親の役目ではないでしょうか。
ついカッとなってしまったら
六歳のアビーは、台所のテーブルの上で、摘んできた花を花瓶にいけようとしていました。と、急に花瓶がひっくりかえってしまいました。花は散らばり、あたりは水浸しです。アビーは自分も濡れたまま、ただ泣いています。飛んできたお母さんは、カッとなって、怒鳴りました。
「なにやってるの! ほんとに、ぶきっちょなんだから!」
わたしたちは、ついカッとなって、こんなふうに子どもを怒鳴りつけてしまうことがありますね。もちろん次の瞬間には後悔するのですが……。疲れているときや、ほかのことで頭がいっぱいのときはなおさらです。しかし、こんなふうに子どもを怒鳴りつけてしまったら、すぐに態度をあらためるべきなのです。